研究課題/領域番号 |
23730590
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
高橋 尚也 立正大学, 公私立大学の部局等, 講師 (10581374)
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キーワード | 協働 / コミュニティ / 受益性 / 国際比較 |
研究概要 |
本年度の研究実績は、大きく3つに大別される。 第1は、韓国における受益性調査および政治意識調査を実施したことである。これは、韓国の20代の青年を対象に、政治参加から受ける受益性認識のクローズ型WEB調査を実施し、309名から回答を得た。このデータによって、日本の行政との協働や政治参加による受益性認識に関する知見と比較することが可能となった。現在、データ分析を実施しているところである。 第2は、日本において、ゆるキャラを用いたまちづくりに対する市民意識調査を実施し、行政との協働に関わるチェックリストを作る上での基礎資料を得たことである。具体的には、ゆるキャラサミット等を実施している埼玉県羽生市において、住民基本台帳より無作為に抽出された600名を対象に郵送調査を実施し、169名から回答を得た。ゆるキャラを用いたまちづくりから得られる受益性は、「自分受益」と「社会受益」に分類され、自分受益が地域愛着やイベント参加を規定し、社会受益が話題化と商品購入を規定してることが明らかとなった。この調査の実施により、平成23年度に実施したフリーマーケット参加者の意識調査データと比較することが可能となり、市民活動横断的な比較データの収集は終了した。 第3は、国際学会で平成23年度の研究知見の発表を実施したことである。具体的には、ICCP(国際コミュニティ心理学会・バルセロナ)であり、この発表を通して、研究知見の一般化の可能性を模索するともに、各国の研究者との討論がなされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的のうち、行政との協働によって得られる受益性の認識を多面的に把握し意味内容を拡張することは、韓国におけるデータ収集と日本におけるデータ収集を終了しているため、おおむね達成している。また、これらのデータ収集により、協働関与者に実証的検討を行う際のチェックリストを作成する基礎資料は集まっているため、最終年度に協働関与者に対して調査を実施するための基盤は揃ったと判断できる。したがって「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、本申請課題の最終年度であり、次の3点を目標とする。 第1は、これまでの研究知見をもとに、協働の進展段階をチェックするチェックリストの案を作成することである。 第2は、市民活動参加者に対して、回顧法形式調査を行い、協働の進展に伴う意識変化を推定するためのデータを得ることである。本来、時系列的に検討することが望ましいが、短い期間で協働が進展することは難しいと考えられるため、回顧法調査によって、第1で開発されたチェックリストとともに、協働の進展に伴う意識変化を実証的に検討していく。具体的には、静岡県の防犯活動や、埼玉県の消費者運動に注目している。 第3は、3年間の研究によって得られた実証的知見を整理・考察することをもとに、行政との協働の進展に伴う意識変化プロセスモデルを提出することである。このモデルが提出できれば、提出したモデルに沿って、具体的な協働推進方策を提言することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の使用計画は、第1に行政と協働して行う活動に参加している者に対する回顧法形式の調査を実施するための費用である。この調査の実施には、実際に現地に赴いて依頼等を行う必要があるため、旅費と実査費用が必要になると見込まれる。 また、本申請課題を学会や学会誌において公表するための費用が発生すると見込まれる。具体的には、アメリカコミュニティ心理学会や日本グループ・ダイナミックス学会、社会心理学会などを計画しており、そのための旅費や校閲費、参加費である。 さらに、3年間の研究知見を実際に行政との協働を行っている一般の人々に広く公開することを計画しており、そのためのホームページ開設やその作業にかかる消耗品費やその他の経費が必要になると見込まれる。
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