研究課題
本年度は、「常習反社会性の予測に関する研究」と「査定・介入システムの構築」を実施した。行動決定過程は不随意性行動決定過程、随意性行動決定過程(認知的歪曲、規範的攻撃信念)、機能欠陥行動決定過程(自己制御、実行認知機能)の3つに分類されるが、不随意性行動決定過程を測定する方法として反社会性潜在連合テストの紙筆版を開発し、以下の各調査にて実施した。前者の研究では、昨年度の少年鑑別所入所者および一般中学生を対象とした調査結果を充実するため、少年鑑別所入所者を対象とした追加調査を実施した。最終的に、鑑別所113名と中学生618名のデータが得られた。後者の研究に関しては、すでに開発された3行動決定過程に関する測定法を、テストバッテリーとしてブックレット化する作業に取り掛かっている。反社会性潜在連合テストの紙筆版の併存的妥当性をパソコン版との関連から確認した。また、潜在的反社会性と認知的歪曲、規範的攻撃信念、非行経験との関連を検討した結果、非行経験のみとの関連が認められ、他指標と異なる独自の説明力を有していた。鑑別所入所少年と中学生との比較では、潜在的反社会性の指標において鑑別所入所少年の得点が有意に高いことも確認された。また、再入所群、初入所群、中学生群の3群を基準変数、3つの行動決定過程に該当する各指標を説明変数にしたロジスティック回帰分析の結果、潜在的反社会性は独自の群説明力を有していた。サイコパシーとの関連の分析結果では、潜在的反社会性と一次性サイコパシー(情緒性の欠如)との間に有意な正の関連が認められた。以上の知見を、各国内大会や国際学会(ICAP 2014)で発表した。随意性行動決定過程と不随意性行動決定過程が、精神的健康と反社会的行動とをともに説明することを実証した研究を学術論文に掲載した。行動決定過程に関する研究知見を中心にまとめた書籍を筆頭編者として出版した。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) 図書 (2件)
岐阜大学教育学部研究報告人文科学
巻: 63 ページ: 173-181.