研究概要 |
本研究は、上司と部下の間で経験した信頼崩壊とその修復の過程に着目したものであった。 最終年度において、信頼関係が崩壊した(と認知した)後、同じ部署で業務遂行する関係が継続する場合、お互いの信頼関係が修復できた人の仕事意欲や肯定的な感情状態は、信頼関係が修復できなかった人のそれらよりも有意に望ましい状態にあった(Yamaura, 2013: ECPで報告済)。 そこで、信頼の修復に有効な条件を明らかにするため、Lewicki & Bunker(1996)の信頼崩壊後のプロセス・モデルと、Aureli et al.(2002)のValuable-Relationships Hypothesisを参考にして検討を行った。まず、信頼崩壊後の対処行動5つのうち(山浦, 2012)、信頼を裏切られた者が相手志向行動をとることは、上司/部下の立場に関係なく、加害者に対する赦しを促進することが明らかになった。続いて、裏切られた者が、相手志向行動をとるようになるための条件について検討した。仮説のとおり、相手との事前信頼高群、相手に対する修復価値高群は、それぞれ低群よりも相手志向行動の選択度が高かった。また、交互作用効果が有意であり、事前の信頼関係が構築されていた場合には、相手に対する修復価値の程度に左右されることなく相手志向の行動をとるが、事前信頼低群の場合には、修復価値低群よりも高群で相手志向行動の選択度が有意に高いことが明らかになった(山浦, 2013: 社会心理学会, 産業・組織心理学会, JAIOP部門別研究会で報告済)。 この他、スポーツチームにおけるリーダーシップのレビューを行い、信頼関係に着目した研究が活発に行われつつあるなど、その動向と今後の展望についてまとめた(山浦, 2013:スポーツ心理学研究)。
|