本研究は、なぜ非行集団に同一化するのかという問いに対して、集団間関係(非行集団がそれ以外の一般集団から受ける差別的扱い)と集団内関係(非行集団に所属する成員同士の相互作用で得られる集団報酬)に着目した。そして、これらが非行集団への同一化を促し、集団差別から生じるネガティブな心理状態(自尊心の低下や不確実性の高揚)を緩和することができると仮定した。過去1年間に逸脱行動に関与した経験のある高校生137名を対象に分析を行った結果、差別的扱いは直接的に自尊心を低め、不確実性を高めた。一方、集団報酬は直接的に自尊心を高め、不確実性を低めたが、集団同一化はこれらを緩和しなかった。
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