研究課題/領域番号 |
23730598
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研究機関 | 南山大学短期大学部 |
研究代表者 |
森泉 哲 南山大学短期大学部, 英語科, 准教授 (60310588)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 日米比較 / 対人コミュニケーション / ソーシャルサポート / 自他意識 / フェイス意識 / 国際情報交換 / アメリカ |
研究概要 |
本年度は,困っている相手に対してどのような援助(ソーシャルサポート)メッセージを発話するのかに関して,自他意識の影響度について日米比較を行い,文化と個人差の観点から発話メッセージの特徴について明らかにすることであった。具体的には,アメリカですでに収集済みのデータに、日本人大学生を対象にデータを収集することであった。質問紙は自他意識として自己愛的傾向ならびにフェイス意識をとりあげ,場面想定法を用いて比較検討することにあった。 実施計画どおりデータを収集し分析を行ったところ,以下の結果が得られた。第1に,想定していたソーシャルサポートメッセージと自他意識の関連はあまり強くなかったが,想定していた方向で関連が見られた。お互いのメンツを守る意識(相互フェイス)がより精緻なメッセージ発話と正の関連を示していた。また理論通りに,自己愛的傾向は自己に対するフェイス意識を高めることが明らかとなった。第2に,ソーシャルサポート産出のプロセスは,日米間で一部説明力の程度は異なるものの,変数間の関連は同一であった。このことからプロセスは通文化的であることが示唆された。最後にソーシャルサポートメッセージの精緻化の程度は,仮説通りアメリカ人は日本人と比較してより精緻化したメッセージを発話する傾向があることが見出された。 これらの結果は,ソーシャルサポートメッセージのプロセスは通文化的であり,むしろ個人差の影響が大きいことがうかがえ,文化の違いのみを強調しすぎる従来の研究に対して,新たな視点を与えていると思われる。しかし同時にメッセージの精緻化の程度には文化の影響を受けていることも示唆され,文化差と個人差の両方から検討する必要がある。これらの知見は,対人コミュニケーションメッセージを文化の多層性ならびに自他意識の観点から研究する重要性を示唆していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の本プロジェクトでは,コミュニケーション様式の日米比較を文化の多層性(特に国と家族コミュニケーションパターン)の観点から日米両文化の社会的問題(キレる・ひきこもる)との関連も視野に入れて検討することである。1年目はその初期の研究として,ソーシャルサポートに関する発話と自他意識との関連について日米比較を行うことが目的であった。当初の目的どおり,すでに取得済みであったアメリカ人データに,本年度は日本人データを収集して日米比較を行うことができ,主要な分析も終了し,その成果も複数の学会で発表した。当初予定した研究計画どおり,研究を実施することができ,結果もほぼ予測どおりの結果が得られたことから,現在までの研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトはコミュニケーション様式の日米比較であるので,日米で十分なデータが収集できるかどうかが本研究の成否を決定する大きな要因となる。アメリカ人データを収集するにはアメリカ側の研究者と連携が不可欠であるので,準備を周到に,かつ早めに関係者と連絡をとり,質問紙調査を実施する。また日本人データを収集する際にも,他大学の研究者に協力を依頼し,円滑にデータ収集ができるようにする。 なお,現時点では,研究計画の変更は予定していない。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に持ち越す予定の研究費はない。当初の予定通り,次年度以降の研究費は日米で質問紙調査を行うための費用とする他,研究成果の発表のための費用に充てる。
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