研究概要 |
平成24年度は,家族コミュニケーションパターンが自他意識ならびにソーシャルサポート要請場面に及ぼす影響について日米比較を行うことを目的としていた。日米大学生合計約500名に対して,a) 過去3か月でもっともストレスを感じた場面の自由記述,b)道具的サポート要請の程度(Carver,1997), c)情緒的サポート要請の程度(Carver,1997), d) 家族コミュニケーションパターン尺度(Koerner & Fitzpatrick, 2002), e)サポート要請に対する自由記述,f)フェイス意識尺度(Oetzel & Ting-Toomey, 2003)を尋ねる質問紙調査を実施した。分析の結果,以下の結果が得られた。 まず,国文化,家族コミュニケーションパターン,ソーシャルサポート要請の関連に関して,アメリカ人は日本人と比較して,家族コミュニケーションパターンの会話志向性,従順志向性をともに高く評価しており,その結果ソーシャルサポート要請の程度もより高く評価していた。さらに,国文化の違いは家族コミュニケーションパターンに完全に媒介されることが明らかとなった。また国文化とソーシャルサポートの言語メッセージとの関連では,アメリカにおいては家族や恋人に感情を表出したり、援助を求めたりするのに対して,日本では友人に対して間接的に愚痴をきいてもらったり、語り合ったりするという様式が相対的に選好されているという結果になった。 これらの結果は,本研究の意義である国単位の文化比較研究に家族文化を投入することの重要性を証左する。今後の比較文化研究には,複数の文化変数を扱い,その相対的影響力について検討するという社会生態学的モデルの可能性ならびに重要性が指摘される。
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