研究概要 |
本研究は,家族コミュニケーションパターンと対人コミュニケーション様式に関連について,日米比較研究を通して明らかにすることであった。特に平成25年度は,対人コミュニケーション様式のうち,主に対人葛藤方略をとりあげて,家族コミュニケーションパターンとの影響について,日米大学生に対して質問紙調査を実施し明らかにした。その結果,平成23,24年度に実施したソーシャルサポート要請場面と同様に,家族コミュニケーションパターンが,対人葛藤方略に影響を及ぼしていることが明らかとなった。家族コミュニケーションパターンは,両親と様々なトピックに関して会話をする程度をあらわす「会話志向性」ならびに,両親の意見に従うという「従順志向性」の下位尺度から構成されているが,会話志向性が高いと,より建設的な対人葛藤方略である「統合方略」がとられ,また従順志向性が高いと,対人葛藤場面では「回避方略」が使用されることが日米文化に共通して見いだされた。つまり,家族領域での豊かな関係は,対人コミュニケーション場面一般,とりわけ相手が大学生に対しても,適用できることを示唆していた。 研究期間全体を通して明らかとなった知見として,家族コミュニケーションのあり様が,大学生の対人コミュニケーションパターンを規定する重要な要因の一つとなっている可能性が指摘できたことである。両親との会話が多くなされている家族で育った学生は,そのスキルを対人コミュニケーション一般に適用し,ソーシャルサポートを相手に求めたり,また他者との葛藤の際には,対人関係を考えながらも,問題解決を図る統合方略を使用していることがうかがえる。また高従順志向性者は,他者からサポートを求めたり,不要な対立を避けていることがうかがえる。今後対人コミュニケーション教育には,対人行動一般だけでなく,家族領域について焦点をあてていくことの重要性も指摘できた。
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