今年度の研究の目的は,前年度の研究成果を踏まえて改良された「適応の改善に寄与する援助要請行動を促進する介入法・改良版(以下,介入法改良版)」の効果を検討することであった。介入法改良版の主な内容はこれまでと同様に①援助評価の心理教育,②ソーシャルサポート提供スキルトレーニング,③援助要請スキルトレーニング,④まとめと二次予防,で構成され,3点が改良された。第1に介入対象者の動機づけを高めるために,介入①の分量を増加した。第2にターゲット・スキルの般化促進をねらいとして,介入②,③にホームワークを追加した。第3に介入②,③のスキルのリハーサル場面を大学生の日常生活により合うように変更し,かつ介入時のリハーサルの機会を増加した。介入第1週は約45分,第2週は約60分,第3週は約10分の介入が実施された。効果測定として,介入直前にpreの質問紙を実施し,介入を行い,介入直後にpost,介入から約2ヶ月後にfollow-upの質問紙を実施した。 対象者は,統制群として大学生32名(男性9名,女性23名,19.47±.80歳),介入群として大学生12名(男性4名,女性8名,20.67±.65歳)であった。 follow-upのデータが得られた対象者が9名と少なかったため,pre・post比較による分析を行った。時期と群を要因とする2要因混交計画の分散分析の結果,援助要請スキルに交互作用が見られ,介入群はpreよりもpostに援助要請スキル得点が上昇した。被援助志向性とストレス反応には時期の主効果の有意傾向が認められ,いずれも介入後に改善する傾向があった。 援助要請スキルの向上は介入の主目的であり,介入法の改良が奏功したと思われる。しかし,その他の変数に介入効果は認められなかった。今後は被援助志向性,すなわち援助要請に関する認知への介入技法を検討し,介入法をさらに改良する必要があろう。
|