研究課題/領域番号 |
23730608
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研究機関 | 白百合女子大学 |
研究代表者 |
東海林 麗香 白百合女子大学, 生涯発達研究教育センター, 研究員 (90550749)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 母娘関係 / 親役割 / 夫婦間葛藤 |
研究概要 |
本研究では,本研究では、<娘の配偶者との関係発達><親としての発達>に、母娘関係がどのように影響するか、またその影響プロセスを横断的・回顧的に検討することで、娘世代の家族発達の促進要因および阻害要因について考察することを目的とする。そのため23年度は,母娘関係を主題とした予備インタビュー,質問紙調査の作成と予備調査,青年期の娘とその母親を対象とした質問紙本調査の実施,を行った。 予備インタビューでは,青年期の娘・成人期の娘の双方から,<進路決定や結婚といった重要事項の決定の難しさや自信のなさ,効力感の低さ>と<母親とのアンビバレントな密着関係>の関連とが見出された。アンビバレントな密着関係とは,母親との関係を支配的なものに感じながらも,母親の助けなしには自身の人生が立ち行かないと感じるような関係性である。対して成人期の娘の母親からは,娘に支配されていると感じながらも,娘の存在を前提とした人生設計をしてきたことが語られ,成人期以降の母娘が,互いに支配されているように感じ,その関係がなければ自由に生きられると感じながらも,精神的にも物理的にも離れることを現実的には考えていない様子が見られた。しかしながら青年期の娘とその母親を対象とした質問紙調査では,先行研究を参考にした母娘関係の4類型と娘の精神的自立や精神的健康の統計的な関連は見出されなかった。これには,ペアでの回収率が28%と少なかったことによるデータの偏りが関連していると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度は期限付採用のため前期で退職となったが,異動先が前期終了直前まで決まらずに受給資格がなくなる可能性もあったため,研究の遂行が一時的に停止せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
以下のとおり行う。(1)質問紙調査により、成人期の娘の夫婦関係および母親役割と、母との関係性との関連の仕方を類型化する。(2)23年度に行った青年期の娘とその母親を対象とした質問紙調査を用い,青年期女性と成人期女性の横断的検討を行う。(3)娘を対象とした回顧的インタビューにより、上記の類型の生成プロセスについて検討し、各類型における家族間コミュニケーション・パターンの共通性と差異について整理する。特に,家族間葛藤、特に母娘間葛藤に焦点を当て、どのような葛藤がどのようなきっかけで発生し、どのように対処し、どんな帰結をむかえたのか、また再発はあったのかという<葛藤の展開プロセス>に関わる家族間のコミュニケーション・パターンを生育暦に沿って聞き取る。このようにして得られたライフストーリーを、複線径路・等至性モデル(サトウ、2006)を用いて整理し、各類型間に至る軌跡の分岐点や合流点を描き出すことを試みる。その上で、夫婦関係への母娘関係の影響モデルを提出する。 分析結果については,これを題材とした当事者による座談会を行い,研究結果の妥当性について検討する。これらの調査結果を報告するウェブページを作成する。希望者には郵送にて調査結果を報告する。また,日本パーソナリティ心理学会,日本発達心理学会にて,報告を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰越金も含め,計画にそって使用する。※カッコ内は費目質問紙調査に関しては,発送準備(人件費)・データ収集(調査旅費)・郵送による回答送付(その他)・データ入力(人件費)に使用する。インタビュー調査に関しては,調査の説明文書の送付(その他)・データ収集(調査旅費)・音声データのテキスト化(人件費)・協力者への謝礼(謝金)として使用する。研究成果の報告に関しては,ウェブページの製作を行うが,閲覧性・操作性の高いものを製作するためにウェブページ製作会社に依頼する(その他)。希望者に対しては,郵送にて調査結果を報告する(その他)。また,学会にて報告を行う(旅費)。
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