研究課題/領域番号 |
23730610
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
五十嵐 哲也 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (90458141)
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キーワード | 不登校傾向 / 登校義務感 / 学級状態 / 学習方略 / 自己効力感 |
研究概要 |
本研究では,登校しながらも学校に行きたくないと感じている児童生徒について,その学校活動状況の特徴を「学習」の観点から把握することを目的としている。そのことによって,学習のいかなる側面への支援が不登校傾向の予防に有効であるのかという点を明らかにすることが,本研究の最終的な目的である。 当該年度においては,初年度に作成した「不登校傾向尺度」ならびに「登校義務感尺度」をもとにして,それらの尺度から考えられる要支援児童生徒の「学習」の特徴を検討するための追跡調査を実施した。その際,学校活動状況は,児童生徒が所属する学級の状態によって左右される可能性があることから,クラス替えによって学級に変化が起きた場合をも含めた前年度からの追跡調査を計画した。最終的に,4つの公立小学校15学級271名,2つの公立中学校23学級440名から,年間ならびに年度をまたいだ欠損値のない調査結果が得られた。 現在までに行った分析によって,小学生では,「なんとなく行きたくない」傾向はあらゆる学習方略低下と,遊びを優先させて学校に目が向かない傾向は作業方略の低水準での維持と,心理的な不調を伴う不登校傾向は人的リソース方略の低下と,それぞれ関連することが確認された。また,学級状態の変化については,「なんとなく登校したくない」傾向や「遊びを優先させたい」傾向は,新学級での承認感の低さおよび新旧双方の学級での被侵害感の高さに関与することなどが示された。中学生では,「なんとなく行きたくない」傾向は作業方略の低下と,遊びを優先させて学校に目が向かない傾向は柔軟的方略・認知的方略の低下と関連していた。また,学級状態の変化については,「なんとなく登校したくない」傾向はその時点の学級における被侵害感の高さに関与し,心理的な不調を伴う不登校傾向は,新旧双方の学級での被侵害感の高さに関与することなどが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画段階で最も困難が予測された追跡調査が実施できている。そのため,既に調査結果の分析を開始する段階に入っており,早期の研究成果公表ができると予測される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,調査校からの要望によって,複数校に対して調査結果をもとにしたコンサルテーションや研修会を実施している。調査結果の統計的な分析のみならず,そのような機会で得られる「日常生活を踏まえた教員の意見」をも踏まえた考察を行うことで,より実態に即した研究成果の取りまとめを行っていくことを考えている。その上で,研究成果の公表をいっそう行っていくとともに,成果公表に対する意見を踏まえた再度の分析等を行っていきたい。
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