本研究は、小中学生の「学校に行きたくない気持ち」(不登校傾向)と「行かなければならない気持ち」(登校義務感)の観点から適応状態を再検証し、登校意欲の改善に有用な学校活動状況(特に、学習活動に焦点を当てる)について、それぞれの児童・生徒が所属する学級状況の違いも併せて検討することとした。研究の結果、(1)小中学生の双方に使用可能な「不登校傾向尺度」を作成することができた。(2)小中学生の双方に使用可能な「登校義務感尺度」を作成することができた。(3)不登校傾向が低く登校義務感が高ければ、学校適応および心理的適応が高いことが示された。(4)個人の学級への満足感は登校意欲を高める傾向にあることが確認されたほか、学級への満足感をどのくらいのクラスメイトが高く抱いているかにもよって登校意欲は左右されることが明らかとなった。(5)クラスメイトに対して被侵害的な感情を抱いている場合、登校意欲の低下という影響は長期に及ぶことが示唆された。(6)具体的な学校活動状況である「学習」については,何らかの学習方略が身についているかどうかということよりも,学習に対して自信をもって取り組めているかどうかという点が登校意欲と強く関連していることが示された。特に、中学生への学習方略の獲得は一時的に登校意欲を高めるのみであり、学習への方法的なスキル獲得に先立って、「やればできる」という感覚の蓄積が重要であることが示唆された。
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