最終年度には、1件の調査実施、学会での発表2件、学術雑誌投稿のための論文の執筆を行った。 まず、昨年度の実験の結果をまとめ、その結果をパーソナリティ心理学会第22回大会において発表した。この実験では、グループの相互作用場面を設定し、課題の教示方法と協同実施課題における個々の成績にどのような関連があるのかを検討したが、本年度に行った分析の結果、自己愛の2側面それぞれが、教示方法による成績の違いに異なる影響をもつことが明らかになった。具体的には、誇大性の高さは教示の内容にかかわらず成績の高さと関連することが明らかになり、評価過敏性の高さは、グループのメンバーにだけ成績が知らされるという状況においての成績の高さと関連していた。この結果については現在、学術誌での発表を目指して論文を執筆しているところである。 また、現実に参加しているグループでの社会的行動に着目し、協同的な課題に取り組みながら学習する授業の参加者に対して4か月にわたり縦断調査を行った。具体的には、主張性の変化に着目した。授業開始時点、開始から約2か月後、授業終了時点の調査結果について分析したところ、自己愛の2側面のうち一方(誇大性)は全体的な主張性の高さを、もう一方(評価過敏性)は、授業の進展に伴う主張性の変化を予測していた。主張性は高すぎると他者から好意的に評価されず、低すぎれば個人内の適応状態を低める要因であると考えられる。評価過敏性はネガティブな適応状態との関連が指摘されている側面であるが、この結果からは、同じ集団で一定のサポートを受けながら活動をしていくことで、自分の考えを人並みに伝えられるようになる(平均的な主張性へとの変化する)ことが示唆された。この結果については教育心理学会第55回大会で発表し、年度末までに論文の草稿を執筆した。現在、学術誌への投稿を目指して体裁を整えているところである。
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