研究概要 |
平成23年度の研究の大きな目的の1つは,学習支援ニーズに関する議論を整理し,理論化を図ることであった。まず,学校心理学や社会教育の領域などで行われてきている議論を検討し,子どもの学習支援ニーズを捉える図式について提示した。"Felt needs"/"Normative needs"(e.g. Griffith, 1987; Pearce, 1995),"Expressed needs"/"Inferred needs"(Noddings, 2003),支援者によるニーズの把握の有無/学習者によるニーズの自覚の有無の2次元の図式などをふまえて,支援を要する仮想の事例をもとにした調査と保護者を対象とした調査について検討を行った。自己調整学習の理論をもとに,質の高いニーズへの転換を図ること,ニーズが生成されてくる心理的プロセスをふまえた学習支援の必要性について指摘をした。 次に,ニーズをふまえた学習支援のあり方について示唆を得るために,支援に関するニーズと評価のズレに着目した検討を行った。研究の目的としては,親による動機づけ支援に関して青年期の子どもがどのようなニーズと評価をしており,両者のズレによって自律的動機づけに違いがみられるのかについて検討を行った。全体としてみると,母親と父親のいずれの支援もニーズに対して評価が上回っていた。また,「関与」よりも「温かさ」,これらよりも「自律性支援」が重要であることが示された。両者のズレに関しては母親も父親も「自律性支援」と「温かさ」においてニーズを満たしていない「-」群で自律的動機づけが低いということが明らかとなった。以上の成果は2本の論文としてまとめており,学習支援ニーズを出発点とした学習支援研究の今後の可能性と方向性について示唆を得ている。
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