研究概要 |
まず、学習支援ニーズに関する議論を整理し、教育心理学の観点から理論化を図った。学校心理学や社会教育の領域などで行われてきている議論を検討し、子どもの学習支援ニーズを捉える図式について提示した。“Felt needs”/“Normative needs”(Griffith, 1987; Pearce, 1995)、“Expressed needs”/“Inferred needs”(Noddings, 2003)、支援者によるニーズの把握の有無/学習者によるニーズの自覚の有無の2次元の図式などをふまえて、学習困難の事例をもとに子どもの視点からみたニーズと支援する側からみたニーズを明らかにした。 次いで、親による動機づけ支援に関して青年期の子どもがどのようなニーズをもち、評価をしているか、両者のズレによって自律的動機づけに違いがみられるのか、明らかにした。全体としてみると,母親と父親のいずれの支援もニーズに対して評価が上回っていた。また,「関与」よりも「温かさ」,これらよりも「自律性支援」が重要であることが示された。両者のズレに関しては母親も父親も「自律性支援」と「温かさ」においてニーズを満たしていない「-」群で自律的動機づけが低いということが明らかとなった。 さらに、学習支援ニーズは多様な学習領域に着目して明らかにしていく必要がある。中国語学習について調査を行い、因子分析の結果、「会話」「語彙」「文化・歴史」の学習支援ニーズが存在することが明らかになった。これらのニーズと取り入れ的調整、同一化的調整、内発的動機づけの間には正の相関が認められた。“Felt needs”と教師の視点に基づく“Normative needs”の2つの側面のニーズの有無によってこれらの動機づけに違いがみられた。結果をふまえ、実践への示唆について検討した。
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