平成26年度には,児童の具体的な表現から自己を見てとる分析について,2種のデータを用いて検討を進め,論文としてまとめた。まず,平成24年度に収集した小学校での授業の録画記録(6年生1クラス)に対し,これまでの研究に基づく理論的枠組みから考察を加え,論文としてまとめ公刊した。また,共同研究者とともに平成25年に執筆した論文(小学校3年生が担任の指導のもとで書いた日記(26人分 632篇)の分析)を学会誌に掲載するとともに,これとは異なる共同研究者とともに小学4年生児童の日記の分析を実施した研究の精緻化をはかった(学会誌に投稿・審査中)。さらに,以上の考察結果を含めた子どもの自己に対する考察を国内外の学会で発表した。 これらと並行して進めた,子どもの自己のあらわれをめぐる理論的考察については,引き続きデンマーク・オールボー大学のJaan Valsiner教授の助言のもとで検討を進め,自己について考察する際「他者性(otherness)」に着目することの重要性に着目し,今後の課題を含めて英文にて理論的考察をまとめた(2015年秋に公刊される論文集に掲載予定)。 以上の研究を含め,本研究の研究期間全体にわたって,次のような取り組みを行い,成果を論文としてまとめるとともに国内外の学会で発表した。①子どもの自己を,記号的媒介過程を通した意味形成の結果観察されるものとする理論的な枠組みを精緻化した ②これまで本研究実施者が収集してきた(一部は共同研究者の協力による),幼児の参加する日常会話および児童の日記の記録について,①の理論的枠組みを適用しその分析のための有効性を示した ③さらに,学校教育の中の授業場面にもこの理論枠組みを適用し子どもの自己を見出せる可能性を示した。これらのうち②③については,現在の教育実践を捉え直し,日常的な相互作用の重要性を改めて指摘するものとなった。
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