本年度は,これまでの研究をとりまとめ,いくつかの学会で発表を行った。具体的には,2つの成果にまとめられる。1つは,特殊教育学会51回大会において,「自閉症教育の新展開:ノリツッコミの授業を通して」と題するシンポジウムを企画し,また,実践者とともに話題提供を行った。そのなかで,自閉症スペクトラム障害のある児童2名が,教えあいながら,ネタを考え,また,ノリツッコミの方法について教えあう姿が見られた。このように自閉症児が教えあいながら,創造性を発揮する姿は,これまでの自閉症教育ではほとんど報告されておらず,貴重な知見といえる。 2つは,発達心理学会25回大会の編集委員会企画シンポジウムにおいて「インパクト中心主義から考える「発達心理学研究」の未来:良質な教育実践から立ち上がる発達・障害理論」と題する発表を行った。そのなかで,自閉症どうしが教えあう教育実践を報告した。そのうえで,これらの実践は,発達・障害理論では説明がつきにくい事象であり,だからこそ,発達・障害理論を拡張する可能性があることを主張した。
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