平成27年度は,これまでの調査結果および教材の試行版を実施した結果をふまえ,教師研修用教材『クロスロード 教育相談編』を完成させた。教師の葛藤が書かれた問題カード,ラッキーカード,YES/NOカード,座布団カード,ゲームの流れの説明シート,解説書の6点が1セットにおさめられたもので,カードゲームとしてのデザイン性にも配慮した。また,教材とは別に開発者以外の者がファシリテーターとなり研修会を実施することを想定して,実施上の配慮事項などを記載したマニュアルも作成した。本教材を用いた研修会を3回実施し,事後アンケートによりその成果を確認した。本教材で提示される葛藤場面は,実際に教師が体験した事例に基づいて設定していることから,リアルなシミュレーションができること,ディスカッションを通して他者の多様な意見を聞くことができ幅広い対応のあり方や考え方を学べることなどが示された。さらに,自らの教育相談に対する価値観や考え方の偏りに気づいた参加者もおり,本教材が自分自身の教育相談のあり方について考える契機を与えることも確認された。さらに,教材の問題カードで取り上げた葛藤場面について,260名の教師を対象とした質問紙調査を実施し,教師がどのように葛藤し最終的にどのような判断を下すのかについての分析を行った。多くの葛藤場面において意見が分かれる傾向があり,活発なディスカッションを促しうる適切な場面設定がなされていることが確認できた。教師の葛藤の具体例,教師にとって最も判断が難しい葛藤場面も抽出され,ゲームで使用する問題カードの選定やディスカッションを促す資料としての基礎的データを得ることができた。教材の開発プロセスおよび質問紙調査の結果について,紀要論文にまとめ報告した。
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