本研究の目的は,教員養成系大学で行われている「教育実習」と「体験的プログラム」における活動内容と学習過程を比較することである。本研究は,(1)教育実習や体験的プログラムにおける学生の体験を測定する為の教師体験尺度の作成,及び学生の指導力の認識について測定する為の指導力自己認知尺度の作成,(2)教育実習と体験的プログラムの体験内容の比較,(3)体験内容と指導力の認知との関連についての検討,という3つの研究を行った。 その結果,以下のことが示された。(1)教師体験尺度は「羨望体験因子」「他者参考体験因子」「児童生徒親和体験因子」「成功体験因子」の4因子構造であることが示された。また,指導力自己認知尺度は「授業実践力」「教育的な振る舞い」「教師としての資質」「教育の知識」の4因子構造であることが示された。(2)「他者参考体験」は,体験的プログラムよりも教育実習の方が多いことが示された。また,「児童生徒親和体験」は,教育実習よりも体験的プログラムの方が多いことが示された。(3)教育実習における「羨望体験」は指導力全般の自己認知に正の影響を与え,「児童生徒親和体験」は「授業実践力」「教育的な振る舞い」の自己認知に正の影響を与え,「成功体験」は「授業実践力」「教育的な振る舞い」「教師としての資質」の自己認知に正の影響を与えることが示された。また,体験的プログラムにおける「他者参考体験」は「教育的な振る舞い」の自己認知に正の影響を与えることが示された。 総じて,教育実習は学生に対する教育的配慮がなされているが,実践的な経験は体験的プログラムに比べて少ない。また,体験的プログラムは教育現場の中で教師と協同して活動する実践的な体験に恵まれている一方,学生に対する教育的配慮は教育実習に比べて少ない。今後体験的プログラムを拡充していくためには,学生への支援体制の整備が重要であると考えられる。
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