研究課題/領域番号 |
23730622
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
荒牧 美佐子 目白大学, 人間学部, 専任講師 (80509703)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 幼児期の家庭教育 / 社会情動的スキル / 幼保小連携 / 小1プロブレム / 認知的スキル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、幼児期の家庭での教育的かかわりが、小学校就学期における子どもの学校生活への適応にどのような影響を与えるかについて検証することである。研究Ⅰとして、幼児を持つ保護者が家庭においてどのようなかかわりを行っているかを明らかにすべく、縦断調査を行っている。2014年度は、小学1年生を持つ保護者を対象に第3次質問紙調査を実施し、現在調査票を回収中である。また、研究Ⅱでは、研究Ⅰに協力してくれた家庭の幼児を追跡し、小学校を通じて、1年生の学力検査を行った。2014年度は、昨年度の調査協力校のうち計4校に通う小学1年生(約360名)に対して、国語に関する学力検査を実施、現在、集計作業を行っている。 また、今年度は、2012、13年度に実施した保護者への質問紙調査から得られたデータを中心に分析を行った。本研究では、小学校入学後の適応状況を示す指標の一つとして、「教師・授業への適応」(「担任の先生のことが好きである」「楽しく授業を受けている」等の項目で構成)と「生活全般への適応」(「学校でのできごとについて話す」「宿題は自分から進んでやる」等の項目で構成)に関する尺度得点を用いた。分析の結果、これらの得点は、幼児期の家庭における保護者の「受容的な養育態度」得点や、子どもの「基本的な生活習慣」得点が高いほど、高くなることが明らかになった。加えて、幼児期において、外向的な問題行動傾向が強い子どもは、小学校入学後の「生活全般への適応」得点が低かった。 一方、家庭の社会経済的地位(SES)は、「教師・授業への適応」「生活全般への適応」得点には直接的に影響を及ぼしていなかったが、母親の「受容的な養育態度」得点は、母親が高学歴かつ、世帯年収の多い家庭においてそうでない家庭よりも高い傾向が見られた。これらのことから、SESによる差は、親のかかわりを媒介し、子どもの発達に間接的に影響を与えている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は、昨年実施した質問紙調査への回答者(回答数385票、回収率61.2%)のうち、追跡調査の実施に対して了承を得ることができた保護者に対して、3度目の質問紙調査を実施した。調査票の配布時期は2015年3月、配布数は383票である。現在、郵送による回収をほぼ終え、データ入力作業に取り掛かっているところである。また、保護者への縦断的な質問紙調査の実施と並行して、協力者の子どもたちの一部が進学予定の都内4校の小学校を通じ、約360名の小学1年生の児童への国語に関する学力検査を実施した。 これらの調査実施、データの回収、分析は、当初の予定では、昨年中に終了する予定であったが、調査協力者の都合により、一部が今年度までずれ込んでいる。調査自体は予定通りすべて実施し終えているので、今年度は、データの入力、分析、結果の発表に努める。
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今後の研究の推進方策 |
調査最終年となる2015年度は、研究Ⅰ、研究Ⅱにより得られたデータの分析を進める。具体的には、保護者から得られたデータと小学校1年生に実施した学力検査との因果関係を明らかにすることにより、本研究の目的である幼児期の家庭における教育的なかかわりが就学後の子どもたちの学力に及ぼす影響について明らかにしていく。そして、得られた知見を学会発表、学会誌への論文投稿等を通じて、報告していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度に計画されていた質問紙調査の実施が調査協力者の都合により年度末となり、調査票の回収、調査によって得られたデータの入力、分析等を次年度に持ち越さざるを得なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
質問紙調査により得られたデータの入力代金や、調査協力者への謝礼、フィードバックにかかる費用に充当する予定である。
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