本研究の目的は、幼児期の家庭での教育的かかわりが、小学校就学期における子どもの学校生活への適応にどのような影響を与えるかについて検証することである。研究期間内には第一次調査として、首都圏に在住の幼児を持つ保護者に対する縦断的な質問紙調査を実施し、計607名分の縦断データを得た。調査票は、母親の養育態度、育児感情、文字や数への教育的な取り組み、絵本の読み聞かせ、小学校への入学準備状況、家庭内における文化的資本・環境、習い事、子どもの発達(問題行動、自己制御機能)、小学校生活への適応状況等に関する設問で構成されている。第一次調査の結果、幼稚園か保育園かといった就園状況の違いや、親の学歴、世帯年収などによって親の教育的なかかわりに違いがあった。特に、子どもへの教育費や世帯年収が高い家庭、また、親の学歴が低い家庭では、早い時期から文字や数の教育を熱心に行っている傾向が見られた。しかし、家庭のSESは、子どもの小学校生活への適応状況に直接的な影響を及ぼしていなかった。続いて、第二次調査では、小学校1年生の児童に対して、国語に関する学力検査を実施した。第一次調査への協力者である保護者と児童とのペアデータは、130名分である。これらのデータをもとに、子どもの疑問に答えたり、子どもが自ら考えようと促すような働きかけといった幼児期の家庭における教育的かかわりが、小学校入学後の子どもの国語の学力に与える影響について分析を行った。
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