研究課題/領域番号 |
23730626
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研究機関 | 江戸川大学 |
研究代表者 |
木村 文香 江戸川大学, 社会学部, 講師 (70424083)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 学校不適応 / グループワーク / 自然体験活動 |
研究概要 |
本研究の目的は、学校不適応の子どもを対象とした自然体験活動によるグループワークがもつ効果を探り、効果的な学校不適応の対応策のあり方に関する提言をまとめることである。その際、生活習慣、情緒、対人関係の3つの要素を含むwellnessに注目し、その増進を通じて社会的自立を促す方略を確立することを目指す。そのためi)学校不適応の小・中学生のwellnessの量的測定と、ii)自然体験活動の実施状況調査、iii)活動の効果と問題点の質的測定の3つを行った。i)では、情緒障害児学級、適応指導教室に通ったり、また通常学級に通っていても何らかの不適応感をもつ小・中学生を対象とした本人、もしくは保護者を対象とした面接調査により、生活習慣、情緒、対人関係の3側面からwellnessの状態を測定した。その際、主治医からの協力も得て、主治医からの情報も加味した。ii)では、情緒障害児学級、適応指導教室等の担当教諭とボランティア支援者を対象とした質問紙調査により、自然体験活動の目的や、そこで行われているプログラムの具体的な内容について尋ねた。iii)では、いくつかの情緒障害児学級、適応指導教室で行われているプログラムについてのインタビュー調査を、各学級の担当者に対して実施した。そのことによって、プログラムの効果と問題点を整理した。さらに、自然体験活動を、学校という枠を超えて実施している専門家を対象に、自然体験活動は、野外教育の現場においてはどのような位置づけになっているのかをインタビュー調査し、実際に参与観察も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自然体験活動をもちいたプログラムを受ける側である、学校不適応の小・中学生の状況、自然体験活動を用いたプログラムを実施する側である各団体の状況について、それぞれ把握することができている。さらに、学校のみならず、学校に自然体験活動を実施する上での助言をしたり、学校に代行する形で自然体験活動のプログラムを実施する立場である野外活動の専門家の団体からも、現状についての情報を得ることができた。さらに、小・中学生の状況については、全体的な状況のみならず、主治医による研究協力を得ることによって、個別の状況についても具体的に把握することが可能となった。このことから、予定通りの達成状況であり、次年度も含めた、今後の研究目的を達成するに、十分な実態調査を行うことができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
23年度に整理した自然体験活動プログラムの実態を整理し、問題点やその効果の可能性を探ることを目的とする。具体的には、自然体験活動等の対応プログラムの実態について、事前指導、事後指導も含めた一連の現状を明らかにすることを目的として、ミクロレベルでの調査を行う。この調査から小・中学生のwellnessに対して得られる効果を検討する。プログラム終了後は、直後、3ヶ月、半年後の3回、それぞれ子ども達を対象とした参与観察とインタビューによる効果測定を行う。あわせてスタッフへのインタビュー調査も実施し、プログラムの効果測定を、個人レベルとグループダイナミクスの観点からの両側面から明らかにする。なおこの際、フィールドの担当者とは、研究協力者と共に、定期的なケースカンファレンス等で密接なコミュニケーションをとり、研究協力者とは、これとは別に定期的なミーティングを行うことで、観察データの共有を行う。なお、このような、学校不適応の小・中学生を対象とした自然体験活動プログラムの参与観察とあわせて、これまでに整理した問題点を活かしたプログラムを、小・中学生、高校生、専門学校生、大学生を対象に、パイロットスタディとして実施する。その際、グループワークの技術的な部分のシステム化のみならず、スタッフのマネージメント、物品のマネージメントなど、従来、さほど重視されてこなかった部分のシステム化に着目することで、より効果的なプログラムの開発を目指す。このようなパイロットスタディを経ることによって、実際に学校不適応の問題を抱えている小・中学生のみならず、インクルージョンな対象者への対応が可能なプログラムの開発につなげる。そして、最終的には社会的自立を促すwellnessの向上を目的とした、グループを用いたプログラムが、効果的かつスムーズに実施されるシステムの確立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、対応プログラムの開発のため、i)自然体験活動のプログラムでの参与観察、および、ii)小・中学生、高校生から大学生と専門学校生をそれぞれ対象とした自然体験活動のプログラムの実施が大きな研究費の使用計画の軸となる。そのため、プログラム実施にまつわる物品費、人件費が中心となる予定である。あわせて、23年度の研究成果については、早々に国内外の学会の個別発表やラウンドテーブル等で報告し、広く意見を求めたいため、学会関連の旅費やシンポジウム開催にかかる費用に使用する計画である。
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