研究課題/領域番号 |
23730626
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研究機関 | 江戸川大学 |
研究代表者 |
木村 文香 江戸川大学, 社会学部, 講師 (70424083)
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キーワード | 学校不適応 / ウェルネス / 健康教育 / 自然体験活動 |
研究概要 |
本研究の目的は、学校不適応の子どもを対象とした自然体験活動によるグループワークがもつ効果を探り、効果的な学校不適応の対応策のあり方に関する提言をまとめることである。その際、生活習慣、情緒、対人関係の3つの要素を含むwellnessに注目し、その増進を通じて社会的自立を促す方略を確立することを目指す。そのため平成24年度は、対応プログラムの開発にむけた研究を行った。研究計画通り、自然体験活動の効果と問題点の質的測定、対応プログラムの開発と効果測定の2つを行った。具体的には、i)自然体験活動のプログラムでの参与観察、および、ii)小・中学生、高校生から大学生と専門学校生をそれぞれ対象とした自然体験活動のプログラムの実施とその効果測定を行った。 i)では、自然体験活動を、学校という枠を超えて実施している専門家を対象に、自然体験活動は、野外教育の現場においてはどのような位置づけになっているのかをインタビュー調査し、実際に参与観察に加わってもらった。この中では、効果的な自然体験活動を行うためには、従来重視されてきた参加者のマネージメントだけではなく、場所、時間、物品、情報、スタッフのマネージメントが、プログラムをスムーズかつ効果的に進める上では非常に重要なカギとなることが示唆された。ii)では、この聞き取り調査の結果をもとに、専門学校生を対象とした自然体験活動のプログラム、小学生から大学生を対象とした自然体験活動をそれぞれ実施し、量的、質的の両側面から効果を測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自然体験活動の効果について、心理支援の立場、学校教育の立場、野外教育の立場、医療の立場、それぞれからの視点で状況を把握することができた。また、状況を把握するだけでなく、それぞれの立場から見た問題点や改善可能な点を、実際に宿泊を伴う自然体験活動を行いながら具体的に知ることができ、プログラムの開発に直接、反映させる素地を構築することができた。 このようにして収集した情報を、対応プログラムの開発に活かし、実際に専門学校生を対象とした宿泊を伴う自然体験学習を企画、運営、実施した。また、同様にして、発達障害やその周辺領域の症状を呈する小学生、中学生、高校生、大学生が参加する宿泊を伴う自然体験学習を企画、運営、実施した。 このことから、予定通りの達成状況であり、次年度も含めた、今後の研究目的を達成するに、十分な調査研究を行うことができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に整理した自然体験活動の効果と問題点、および対応プログラムのパイロットスタディとしての実施とその効果測定の結果を活かし、長期的な効果をもたらすことのできるプログラム、および短期的あるいは中期的に得られた効果を、持続させるシステムを構築するための方略を検討する。具体的には、平成24年度に実施したプログラムを、整理した問題点を改善した形でブラッシュアップさせる。その際、心理学の立場のみならず、児童精神科医、野外教育の専門家、保健福祉の専門家といった各研究協力者の立場からみた問題点や、wellnessに関する効果を反映させたものとする。また、効果測定にあたっては、24年度のプログラムへの参加者を継続して調査対象とし、長期的にwellnessに効果がみられるのかどうか、また日常生活においてどのように質的な変化が見られているのかを、月2回程度のグループ活動の中での本人の行動観察や家族へのインタビュー、主治医からの情報、さらには学校での様子をもとに検討する。このような本人や家族、また本人達をとりまく様々な立場の支援者からの情報収集を、連携の場と捉え、効率的に情報交換できる方略を検討する。 さらに、年に1度という頻度で継続的に、宿泊を伴う自然体験活動に参加し、wellnessに関して得られた効果を、グループワークを用いて持続させ、一般化するために必要なシステムを構築する。その際、どのようなグループダイナミクスが生じるのかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、対応プログラムの開発と長期的な効果の測定、およびその効果を持続させるシステム構築のため、i)小・中学生、高校生から大学生を対象とした自然体験活動のプログラムの企画と実施、および、ii)長期的な成果の検討に必要なデータの収集と、それらの情報を活かし、関連する支援者が効率よく連携をとれるシステムの整備が大きな研究費の使用計画の軸となる。 そのため、プログラム実施とデータ収集に関する物品費、人件費が中心となる予定である。あわせて、24年度の研究成果の報告と共に、最終年度である25年度は、一連の研究成果の報告のため、国内外の学会の個別発表やラウンドテーブル、およびシンポジウム等を企画する予定があるため、学会関連の旅費やシンポジウム開催にかかる費用に使用する計画である。
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