現実に競争を求められる状況は多々存在するが,これらの場面で児童・生徒がその競争に対してどのような態度・行動を示すかについては,教師の競争に対する態度や信念の形成を促す働きかけが与える影響が大きいと考えられる.24・25年度では,教師の競争に対する指導態度・指導行動について探索的な検討を行い,勝敗にこだわるのではなく,その過程における動機づけや成長について競争を肯定的にとらえる態度の存在を指摘し,さらに,その指導内容は自身の持つ競争に対する態度を基準に決定されている可能性が示唆された.26年度は,教師の競争心が競争に対する指導内容・態度としてどのように取り入れられているのかに注目して検討を行った.教師の競争心のタイプ(消極的競争者,手段型挙走者,目標型競争者)により分類して比較したところ,競争の必要性に関する記述のうち,消極的競争者で必要と明言した教師はいなかった.手段型競争者,目標型競争者の教師は競争に対する直接的な指導や競争の効果に関する記述が多いが,競争に伴う負の感情に対する配慮に関する記述が見られた.すなわち,ただ競争をさせるのでなく,適切な競争が行えるように配慮する姿勢があることが明らかとなった.これらの結果を受けて,教師の競争に対する指導態度の尺度を構成し,指導態度の構造を検討するための調査を実施した.
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