平成23年度では、第1に、仮想的有能感と社会観との関連の追試的検討を実施した。大学生470名を対象に、他者軽視尺度、自尊感情尺度、競争社会・序列化社会への意識尺度、信頼感尺度、将来の予測に関する質問項目等を実施した。分析の結果、他者軽視傾向は序列化社会への意識とは正の、他者信頼感とは負の相関関係にあり、将来の日本社会を否定的に予測する傾向と関連していた。第2に、政治に対する意識・態度と仮想的有能感との関連について検討を行った。政治に関する新聞記事(消費税増税)を刺激材料として、大学生191名(男性73名、女性118名)に調査を実施した。自由記述の解析の結果、他者軽視傾向が高いほど、消費者の負担増に着目し、福祉の充実等の可能性に言及しにくい傾向が見られた。 平成24年度は、政治的関心、政治信頼感および政治的効力感と仮想的有能感との関連を検討した。5月(対象者389名)及び7月(対象者377名)に大学生を対象とした調査を実施した。その結果、他者軽視傾向の高さは、政治関与の資格があるとの自己評価を高めつつも、自身の意見が政治に反映されるとの効力感を低めていた。また類型の比較からは、全能型よりも仮想型で、政治への関心が最も低いことが明らかとなった。 平成25年度は、仮想的有能感と政治に関する行動との関連を検討した。大学生337名を対象に仮想的有能感尺度、自尊感情尺度、政治的自己効力感、政治へのコミットメント指標(投票行動や政治に関する会話の程度等)からなる質問紙を実施した。分析の結果、政治に関する行動は、政治的自己効力感の政治関与の資質によって促進され、政治に対する無力感によって抑制されるが、他者軽視傾向が高いほど、政治関与の資質と政治に対する無力感の双方が高くなる傾向にあった。これらの結果は、他者軽視傾向の高い青年達が、政治参加に関して葛藤状態にあることを示唆していた。
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