研究課題/領域番号 |
23730637
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研究機関 | 広島文教女子大学 |
研究代表者 |
新見 直子 広島文教女子大学, 人間科学部, 講師 (40584280)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | キャリア教育 / 就職支援活動 |
研究概要 |
本研究はキャリア教育の中で重視している意識・態度等(キャリア意識)と就職や働くことを回避する傾向(職業忌避的傾向)を指標として,大学生のキャリア発達過程の解明及び大学における効果的なキャリア教育・就職支援活動の在り方について3つの研究をとおして検討することを目的としている。平成23年度は,研究計画に基づいて理論研究(研究1)及び実証研究(研究2と研究3)を実施した。理論研究(研究1)については,論文を中心に情報収集を行った。実証研究のうち,大学生のキャリア発達過程を明らかにするための縦断的発達研究(研究2)では,初年度データの収集を行った。さらに,大学1から3年生のデータに基づいて2指標の横断的学年差と約3か月間の短期縦断的検討を行った。学年差検討の結果,3年生は他の学年よりも希望進路実現に向けた活動を行う傾向にあったが,働くことを回避しようとする傾向も強かった。短期縦断的検討の結果,キャリア意識は3か月間で学年に関係なく上昇傾向にあった。それに対して,職業忌避的傾向の変動はみられなかった。加えて,目的学部・学科(教員養成課程)と非目的学部・学科間で働くことに対する意識の違いも検討した。また,大学でのキャリア教育・就職支援活動の効果検討(研究3)の一環として,自己理解促進に関する取組を取り入れた実験的講義を行い,その効果を検討した。分析の結果,2つの指標に関して統計的に顕著な効果は認められなかったが,受講生から実験的講義に対する肯定的な感想や評価が得られたことから,ある程度は効果があったものと考えられる。さらに,キャリア意識が上昇した者の特徴を検討したところ,実験的講義で主に扱った自己理解だけでなく情報収集等も意識変化に影響したことが示唆され,来年度の実践的試みを改善する方向性が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論研究(研究1)については,大学生のキャリア発達プロセスモデル構築に向けて情報の収集と整理を行った。次に,大学生のキャリア意識に関する縦断的発達研究(研究2)では,経年比較可能な大学1年生のデータを収集し,今後も継続して収集可能な環境が整っている。1年生から3年生までを対象とした3か月間の縦断的データに基づく縦断的検討結果は,今後追跡データに基づく検討をする上で,学年進行による発達的変化と集団固有の特徴を区別する上での有益な資料となると期待できる。当初計画では目的学部・学科と非目的学部・学科の学生データを継続的に収集し,卒業後の進路明確度によるキャリア発達過程の相違を検討することを目的としていた。それに対して平成23年度に収集した経年検討可能なデータは非目的学部・学科のもののみであったが,卒業後の進路の明確化について測定しているので卒業後の進路明確度による違いは検討可能である。最後に,大学でのキャリア教育・就職支援活動の効果検討に関する調査(研究3)については,当初平成23年度に就職支援担当部署に協力を求めて大学における就職支援の効果判定を行い,平成24年度に実験的講義の効果判定を行う計画であった。しかし,平成23年度に実験的講義を行うことが可能であったので,前倒しで自己理解に焦点化した実験的講義の効果を検討した。その結果,統計的に十分効果が上がったとは言えなかったが,受講生の感想・意見等から一定の効果があったものと考えられる。また,キャリア意識の上昇した学生のデータに基づく分析結果等から実験的講義の改善策が見出された。さらに,就職支援担当部署と連携し,平成24年度に大学における就職支援活動の効果判定を行うための調査を実施する準備も行い,平成24年度初めから調査を開始する予定になっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究1の理論研究については,今後も継続して論文等から情報収集を行い,内容を精査してより大学生の実態に合ったキャリア発達プロセスの構築に努める。また,他大学のキャリア教育実践についての情報も収集し,実証研究の結果等も勘案し,より効果的な大学におけるキャリア教育・就職支援の在り方についても検討していく。研究2の大学生のキャリア意識に関する縦断的発達研究については,平成23年度に収集できなかった目的学部・学科の縦断的データを収集できるよう関係者等に協力要請を行う予定である。また,すでに収集している非目的学部・学科の学生のデータについては継続して2年目のデータを収集し,1年間の縦断的変化について検討するとともに,平成23年度に収集した1年生と2年生の横断的データと比較して発達的特徴と集団固有の特徴を検討していく。さらに平成24年度からは,大学生のキャリア発達過程と高校生のキャリア発達過程の比較検討を行うために高校生の縦断データの収集も開始する計画になっていることから,協力校の選定及び調査協力依頼等も行う予定である。研究3の大学でのキャリア教育・就職支援活動の効果検討に関する調査については,就職支援担当部署と連携し大学における就職支援活動の効果判定を行うとともに,大学生が求める就職支援等についても検討し,効果的な就職支援の内容や支援を行う時期についても検討していく。さらに,平成23年度の実験的講義の結果示唆された改善方法を組み入れた実験的講義を実施し,その効果検討を行う。平成23年度と平成24年度のデータに基づいて,実験的講義の内容の違いによる効果の違いについてもあわせて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度(平成24年度)は,平成23年度の研究成果を国内外の学会等で発表するための出張旅費が必要である。成果発表予定の学会は,22nd European Early Childhood Education Research Association (Oporto, Portugal, August 29th‐September 1st, 2012) ,日本心理学会第76回大会(専修大学人間科学部心理学科主催)(神奈川県,2012年9月11日‐13日),日本教育心理学会第54回総会(琉球大学教育学部主催)(沖縄県,2012年11月23日‐25日)である。さらに,平成24年度の調査実施に関する打ち合わせ等を行うために数回分の国内出張旅費も必要である。出張予定先は,島根県松江市と宮崎県宮崎市である。上記の国内外の出張旅費として合計50万円が見込まれる。また,平成24年度の実験的講義及び就職支援担当部署と連携して就職支援活動を推進していく上で,学生の職業的興味や職業的適性等を客観的に捉えるためにVPI職業興味検査,一般職業適性検査(進路指導用)検査及びキャッテルCFIT検査の検査用紙等を購入する予定である。これらの検査は,平成23年度の実験的講義実施の際にも実施しており,実験的講義の内容を統制するとともに,就職支援の基礎的資料とするために平成24年度も購入して実施する必要がある。これらの検査用紙の購入代として10万円,さらに研究2と研究3の調査を行う上で調査用紙の印刷費として5万円,データ入力費用として7万円を要する。加えて,平成24年度は研究成果を論文としてまとめて発表する計画であるため,それに伴う英文校閲費として3万円が見込まれる。その他,消耗品代(プリンタトナー,文具等)として5万円が見込まれる。
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