大学生のキャリア発達過程の解明及び大学における効果的なキャリア教育・就職支援活動の在り方についての検討を目的とする本研究の最終年度である平成26年度では,これまで行ってきた理論的・実証的研究を継続するとともに研究のまとめ作業を行った。理論的な研究については,キャリア発達やキャリア教育に関する研究や実践などに関する文献に基づいて,青年期のキャリア発達やキャリア教育について整理を行った。実証的研究については,以下の3点を見出した。第1に,大学生は現在から大学を卒業するまでに自己の職場適応に関する能力が上昇すると予想していた。この得点傾向は,学年によって違いはみられなかった。それに対して,社会人は大学を卒業してから現在までそれらの能力が上昇してきたと捉えていた。また,職場適応する上で重要だと思う能力の側面については,大学生は社会人よりも多くの能力や態度が重要だと捉えていた。さらに,大学生が重視する側面に学年差がみられ,3年生では自己を表現することを重視し,2年生では計画性や誠実性などを重視する傾向にあった。第2に,目的学部・学科と非目的学部・学科間の違いについて検討したところ,職業観だけでなく,他者を支援する際に選択する方法に違いがみられた。さらに,目的学部・学科に所属し,将来教員を希望している学生であっても,どの学校段階の教員を希望するかによって違いがみられることも明らかになった。第3に,大学生を対象とするキャリア教育実践について,小グループによる実践の効果を検討したが,統計的に顕著な結果は見出されなかった。しかし,就職活動に関する情報提供だけでなく,社会人生活に関する情報提供や調査結果を提示することで,就職活動に対する意欲の上昇や,進路選択に関する不安の低減につながる可能性が示唆された。これらの成果の一部は,学会発表等で報告した。
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