研究課題/領域番号 |
23730642
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
田上 恭子 弘前大学, 教育学部, 准教授 (80361004)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 自己愛 / 抑うつ / 自伝的記憶 / 臨床心理学 |
研究概要 |
今年度の研究の目的は,自己愛傾向と抑うつとの自伝的記憶の機能における類似点・相違点を質問紙調査によって明らかにすること,自己愛傾向にみられる自伝的記憶の歪みを同定すると共に,自伝的記憶の自己機能不全という観点からそのメカニズムを検討することの2点であり,具体的には2つの研究を計画し,以下の通り実施した。 1.【研究1】自伝的記憶の機能の測定尺度の検討,及び抑うつと自己愛傾向における自伝的記憶の機能の特徴に関する質問紙調査研究 大学生119名を対象に,先行研究(Bluck, Alea, Haberrnas, & Rubin, 2005)の尺度を翻訳し,抑うつ(BDI-II),自己愛傾向の測定も合わせ,調査を実施した。データ数が少ないため,平成24年度にも追加で調査を実施し,データを合わせて分析して,平成24年度の第76回日本心理学会で発表する予定である。 2.【研究2】抑うつと自己愛傾向における自伝的記憶の自己機能の特徴 自伝的記憶の自己機能を捉える測度として想起の視点及び時間的距離感に着目し,大学生を対象に実施した2つの調査について,SPSSを用いた分析・まとめ・学会発表(第12回ヨーロッパ心理学会,第75回日本心理学会,第65回東北心理学会)を行った。2つの研究から示唆されたことは次の通りである。(1)抑うつでは第三者的視点から記憶想起しやすいという予想と異なり,軽症抑うつでは三人称的視点をとりやすいが重症になると一人称的視点が多くなる。(2)抑うつ者は過去の自分をより遠く感じる傾向がある。(3) 抑うつと自伝的記憶との関係には自己概念の変化が影響しているようである。(4)過敏型自己愛で,昔のネガティブなエピソードを一人称的に想起する特徴がある。(5)軽症抑うつにおいては自己愛傾向の違いで想起の視点が異なる。(6)想起の視点には記憶内容の感情的性質も影響する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2つの目的を達成することを目指し,計画した2つの研究は実施できたという点では,おおむね順調に進展していると考えられるが,目的1達成のための研究1において,予定よりも収集したデータ数が少なく,分析に際し十分なデータ数であるとはいいにくいため,追加で同調査を実施する必要が生じた。そういった点において,やや遅れている,もしくは平成24年度調査が遅れる可能性があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究の目的も昨年度と同様の,自己愛傾向と抑うつとの自伝的記憶の機能における類似点・相違点を質問紙調査によって明らかにすること,自己愛傾向にみられる自伝的記憶の歪みを同定すると共に,自伝的記憶の自己機能不全という観点からそのメカニズムを検討することの2点とし,具体的には以下の研究活動を行う。 1.前年度の研究1と同様の調査を追加で行い,前年度データと合わせて分析し,第76回日本心理学会,第66回東北心理学会などで発表する。 2.前年度実施した研究2について論文執筆を行う(英文校閲料,雑誌投稿料)。 3.調査研究3の計画・実施: Rhodewald & Eddings (2002)他の文献を展望し,実験・調査計画を立てる。現時点では場面想定法を用い自伝的歪みの特徴を抽出する方法を予定。平成24年度中にデータ収集・分析を終了し,平成25年度開催のヨーロッパ心理学会で発表する。 4.次年度の面接調査(デジタルビデオカメラの購入予定)に向けての研究の準備(文献展望,資料収集など)を行う。 なお,当初は平成24年度は研究目的2達成のための2つの研究実施を計画していたが,平成23年度の時点で,目的2達成のために2つの調査研究結果を分析し発表したことなど,力点を置いてきたこと,目的1のための調査研究の追加の必要性が出てきたことから,今年度は調査研究の実施は研究3のひとつに絞る形に変更する。また,よりよく研究を進展させるために,データの入力・分析,資料の収集・整理等においては研究補助者を雇用し,サポートを求める。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. 物品費: 調査の実施,データの整理,分析,結果のまとめ,学会発表,論文執筆,論文執筆のための文献研究,投稿等々に必要な,文具やPC関連消耗品などを中心に使用する。2. 旅費: 日本心理学会発表(東京),東北心理学会発表(新潟),また資料収集のための旅費として使用する。3. 人件費・謝金: データの入力・分析,資料の収集・整理等において補助者を雇用するために使用する。4. その他: 投稿料が必要な学会誌に論文を投稿する場合に使用する。
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