研究課題/領域番号 |
23730642
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
田上 恭子 弘前大学, 教育学部, 准教授 (80361004)
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キーワード | 自己愛 / 抑うつ / 自伝的記憶 / 臨床心理学 |
研究概要 |
今年度は,前年度データ数が少なかったために今年度追加で研究1のデータ収集を行うこと,研究目的1)と2)に関する研究の実施,分析,新たな研究計画のための文献研究を行った。 1.自伝的記憶の機能の測定尺度の検討,及び抑うつと自己愛傾向における自伝的記憶の機能の特徴に関する質問紙調査研究(研究1追加調査):大学生160名を対象に,昨年度と同様の質問紙を用い,調査を実施した。昨年度のデータと合わせ,抑うつと自己愛傾向を組み合わせて分析した結果,抑うつと自己愛傾向においてはどのような場合に人生を振り返るかが異なること,また抑うつと評価過敏性自己愛が共に高い一群において特徴的な自伝的機能を有する可能性があることが示唆された。この研究成果について,今年度開催された第76回日本心理学会で発表した。 2.自伝的記憶の機能の測定尺度の検討,及び自己愛傾向における自伝的記憶の歪みと自己機能の不全に関する研究(研究3):研究1で実施した調査のデータについて,機能の測定尺度についてさらなる分析を行い,また自己愛傾向を2つのタイプに分けてさらに詳細に分析した。測定尺度の共分散構造分析を用いた確認的因子分析の結果からは4因子構造の適合が良いことが示された。また誇大型自己愛と評価過敏型自己愛とで特に自己機能で異なることが示唆された。結果については,平成25年度開催される第13回ヨーロッパ心理学会で発表する。 3.自己愛傾向における自伝的記憶の歪みと自己機能の不全に関する研究(研究4):場面想定法を用いた実験的調査研究を計画するために文献研究を行ったところ,そもそも想定していた場面想定法による実験が本研究の目的には適さないことが明らかとなった。さらに文献研究を進め,自己愛における自伝的記憶の機能不全がより捉えられるような方法を見出し,次年度実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自己愛傾向における自伝的記憶の歪みと自己機能の不全に関する研究の具体的な実施計画において,さらなる文献研究を行った結果,当初予定していた場面想定法による調査が適さないことが明らかとなり,今年度の調査の実施を見送ったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は平成24年度成果の学会発表,論文執筆,及び当初目的2)と3)に関する研究の計画・実施を行う予定である。 1.平成24年度成果を第13回ヨーロッパ心理学会で発表する。 2.これまでの成果について論文執筆を行う。 3.当初目的2)に関する自己愛傾向における自伝的記憶の歪みと自己機能不全に関する研究の計画・実施:さらなる文献研究を行い,よりよい方法を吟味した上で,データ収集・分析を行う。 4.当初目的3)に関する面接場面における自伝的記憶の語りと自己愛傾向との関連に関する質的研究の計画・実施:よりよい方法を検討し,データ収集を行う。 なお,やや研究の進みが遅いことから,上記3についてはサポートを効果的に用いることとし,4についてはデータ数を当初予定より減らし,今後の仮説生成のための予備的研究として位置づけることとしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. 物品費:調査の実施,データの整理・分析,結果のまとめ,学会発表準備,論文執筆,投稿等々に必要な文具やPC関連消耗品,ソフトウェアを中心に使用する。また当初目的3)の面接調査において使用するビデオカメラを購入する。 2. 旅費:ヨーロッパ心理学会における成果発表(ストックホルム),また資料収集のための旅費として使用する。 3.人件費・謝金:データの入力・分析,資料の収集等において補助者を雇用するために使用する。 4.その他:投稿料が必要な学会誌に論文を投稿する場合,英文校閲などに使用する。
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