研究課題/領域番号 |
23730646
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
樫村 正美 筑波大学, 人間系, 助教 (00550550)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 感情育成 / 情育 / 感情コンピテンス / 心理教育 / プログラム開発 |
研究概要 |
本研究は、児童青年の感情育成(以下、情育)のための心理教育的介入パッケージの開発を目的としたものである。平成23年度では、当初の研究実施計画に基づき、人間の感情、感情の処理、制御、および心理教育に関する先行研究、文献等をまとめ、本研究で今後開発していく介入パッケージのための理論的枠組みの構築を行い、また国内外の学会に参加・発表することで他の研究者との情報交換する中で、今後情育という考え方が非常に重要な位置を占めるようになることを確信することができた。 まず、先行研究のレビューから、我が国においてはストレスマネジメント、うつ病予防、自殺予防などの研究ですでにいくつかの心理教育が行われているものの、感情や感情を育てるといった観点に特化した心理教育はまだなされていないことが明らかとなった。また、先行研究などの知見から、子どもへのアプローチのみでなく、その養育者への介入も併せて行うことで、子どもの感情が豊かに育つだけでなく、養育者の感情に対する効力感が強まったり、子育てに対する不安、ストレスを緩和する可能性があったりするなど、情育の相乗効果が期待できることがわかってきた。したがって、平成23年度では子どもへの介入だけでなく、養育者を対象とした感情への介入法をレビューし、いくつかの介入法の中でも応用行動分析学に基づく「Activity-Based Intervention: Social Emotional Approach(以下、ABI: SE)」に着目し、マニュアル本の翻訳、および実施可能なフィールドの探索を開始した(これについては現在においても継続中である)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献研究等は研究計画通りに進行し、国内外での学会に参加・発表することで情報交換も行うことができた。しかし、当初予定していた児童・青年に対する調査研究を実施することができなかった。その一つの理由としては、当初調査研究で明らかにしようとしていた事象(感情に対する否定的信念、その生起プロセス、感情の処理・制御のための方法など)が先行研究のレビューによって幾分明らかになってきており、調査実施がためらわれてしまったことが挙げられる。この点に関しては、本研究の申請時の先行研究レビューが不十分であったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ABI:SEの日本語版の作成、およびトライアル実施のため、今後も翻訳作業(出版を視野に入れ、版権の獲得および出版業者との調整を行う)と実施フィールドの探索を進めていく。また、当初の研究計画の通り、平成24年度ではこれまでにすでに考案されてきている情育のための介入案(試作版)を児童、青年、養育者を対象として実施し、心理教育の内容や対象者の理解度の確認などを綿密に行っていく。このため、今後は研究協力を得るために小・中学校、高校、大学などへの協力要請を行う。トライアルを実施していく中で、現段階の試作版の介入案をプログラム評価を行いながら精査し、改善された介入案を最終版としてまとめる。 調査研究に関しては、これまで子どもを中心とした調査、また先行研究においても子どもに焦点づけた先行研究が多くみられるが、子どもの感情育成にかかわる養育者としての観点から、養育者の心理状態を明らかにしようとしたものは多くみられない。本研究では、児童・青年だけでなく養育者も情育の対象とすることから、養育者を中心とした調査研究も追加で実施することにする。内容としては、養育者自身が感情に対してどの様な信念を持ち、それが子育てにどのように影響しているか、また養育者として子育て、自身の子ども、そして自分自身の感情を扱うことに対してどのように効力感を持っているのか、持ち始めるのかを明らかとする調査研究を実施したいと考えている。 最後に、平成24年度も引き続き、国内外で開催される関連学会等に参加・発表を行うことで他の研究者と情報交換を進め、本研究での成果を発表する場を設けていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度における研究費の使用については、主に介入のためのトライアル研究で実験協力者にお渡しする謝金、および介入の実施やデータの整理、分析にかかわる研究協力者への謝金が挙げられる。また、国内外の学会参加の諸費用、および養育者を対象とする調査研究にかかる印刷代、および本研究の内容に関わる論文、書籍などの物品購入に充てられる。
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