最終年度では、昨年度作成した「活動に根ざした介入:社会感情コンピテンス育成のための支援(Activity-Based Intervention: Social Emotional Competence(以下ABI:SE))」の日本語版の効果の検討、そして大学生を対象とした「怒りと上手く付き合うための短期プログラム」の作成と試験的導入を目的とした。 まず、日本語版ABI:SEについては、療育を行う支援者数名にアセスメントツールのワ―ディングの最終チェックを依頼し、実際に現場で使用してもらった。その結果、まず母親用の育児環境チェックリスト、および子どもの社会感情コンピテンスのアセスメントツールは、感情発達にリスクのある子ども、および養育能力にリスクのある母親のスクリーニングに役立つことが報告された。一方、アセスメントツールの社会感情コンピテンスの発達月齢基準が日本ではやや異なる可能性が示され、アメリカと日本の基準を再度検討する必要がある。また、本マニュアルについては介入の具体的内容にやや欠く面があるため、応用行動分析などの手法を援用しながらわが国ならではの介入方法を検討すべきである。 次に、大学生を対象とした介入であるが、これは海外のプログラムである「怒りのための30分セラピー(30 minutes therapy for anger)」を翻訳し、ワ―ディングのチェックを行い、大学生数名に実施した。その結果、理解度に関して問題は見られず、参加者全員が本プログラムを役立ったものとして評価していた。本プログラムは約1ヵ月、1個/日でコンテンツをこなすセルフヘルプ型プログラムだが、参加者から期間が長いことが指摘されており、内容的にさらにまとめることで短期的なプログラムにする必要がある。 しかし、これらのプログラムでは客観的アウトカム指標を用いての効果検証に至らず、今後の課題としたい。
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