研究課題/領域番号 |
23730648
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小堀 彩子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (00432188)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | バーンアウト / 援助要請 / 学校臨床 |
研究概要 |
少子高齢化が進み対人援助職のニーズが高まりを見せる昨今,対人援助職従事者のバーンアウトの予防と介入は重要な課題である。バーンアウトは彼らの職業病として永らく指摘されているにもかかわらず,なぜ彼らは疲弊するプロセスで組織のサポート資源を活かせないのだろうか。以上の問題提起の元,本計画では彼らを取り巻く職場内外の人間関係を「援助職の援助要請」という視点から捉え,援助要請とバーンアウトとの関係を面接調査によってプロセスモデルを生成することを試みた。 インタビューは研究者の知人の複数のスクールカウンセラーに対して実施した。いずれのスクールカウンセラーも勤務歴が長く,経験が豊富で,多くの学校スタッフと接してきた者であった。 面接では,同じ職種の者が一人もいない状況の中で,どのように自らの役割を学校の中に位置づけ,連携体制を構築していったのかという点について聴取した。また,思うように活動を展開できない場合に誰に援助を要請したのかといった点や仕事にまつわる疲労感やその解消方法についても尋ねた。 面接の内容をまとめると,前任者のイメージが好ましくない場合や学校組織全体が情報の共有に関する体制が整っていない場合,教員との連携関係や,スクールカウンセラーが教員相手に援助要請を求める際に支障をきたす場合が多いことが明らかになった。さらに,スクールカウンセラーの元にリファーされてきた個々の事例において,何らかの成果を挙げることが有用性の認識につながり,連携体制や援助要請体制を構築する促進材料となることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初インタビューを予定していた組織において,インタビューの実施が困難となってしまった。それに伴い,インタビュー対象としていた職種自体の変更を余儀なくされ,研究のレビュー等からやり直す必要が生じた。本来であれば,年度末までにモデルの生成までを完了する予定であったが,現状では,インフォーマントをもう少し増やし,説明力のあるモデルを構築する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,第一に,援助要請とバーンアウトとの関係を面接調査によってプロセスモデルを生成するために引き続き面接調査を継続し,データ収集が終わった時点で分析を行う。対象は,研究者の知人のスクールカウンセラーである。 第二に,小中高校の教員を対象に援助要請や他職種との連携とバーンアウトとの関連を明らかにするための質問紙調査を実施する予定である。研究者の知人の勤務先および知人の紹介先に対して調査の依頼を行う。 実施方法としては,各施設で取りまとめ役を1名依頼し,各施設の都合に合わせて無記名式の質問紙の配布と回収を行う。各施設で質問紙を回収する形式や,郵送形式で個別に応募者に質問紙が届く方式など,状況に合わせて柔軟に対応する。いずれにせよ,回答した内容が外部にもれることのないよう,封のできるシールつきの封筒を用いて回収を行う。 想定される問題としては,バーンアウトというテーマの特質上,研究協力者が質問紙調査を通じてメンタルヘルスを悪化させてしまうようなことがないよう,項目内容には十分に留意する。質問紙の最初のページには,調査への回答は自由である旨を銘記し,さらに必要に応じ応募者に問い合わせることのできる連絡先(メールアドレスと電話番号)を記載することとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費としては,まず研究に必要な知識を入手するために書籍や雑誌が必要になると思われる。またインタビューや質問紙調査において筆記用具や紙,ファイルといった消耗品も必要になる。 研究に必要な知識や情報交換のために学会に参加したり,専門家との意見交換に出向くために旅費が必要となる。 人件費・謝金は,インフォーマントに対して,また,逐語を起こしたり,質問紙データの整理等の事務的な補助に従事した者に対して支払う予定である。 さらにインフォーマントや調査協力者への連絡や書類のやり取りのために宅急便等の費用も要すると思われる。
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