研究実績の概要 |
これまで社会恐怖と対人恐怖は,恥の病理として一括りにされてきた。しかし,近年では前者が回避的な防衛方略を用いやすく,後者が強迫的な防衛方略を用いやすいといった相違に関する指摘もなされつつある。この両者における防衛の相違は,不安の維持プロセスや介入法の選択にも影響を及ぼすものと考えられるため,これに対応できる新たな実証研究が早急に求められている。 そのため本課題では,社会恐怖と対人恐怖のアナログ類型が抽出可能な実証モデルを援用し,各々で異なる不安維持プロセスの要因解明,当該の統合的知見を踏まえた,各々に有効な介入プログラムの策定および介入効果の検証を行う。 今年度は,前年度に作成された介入プログラムの効果検証を行うことが重要な課題であった。不安の維持プロセスが異なる社会恐怖と対人恐怖には,各々思考整理を主とする介入法(認知療法)と受容的介入(森田療法)が有効だと予測された。特に,強迫的防衛を持つ対人恐怖にて,思考整理を主とする介入法が功を奏さない現象に注目する。 過敏特性優位型10名(社会恐怖),誇大-過敏特性両向型10名(対人恐怖),中間型10名を1ユニットとして3ユニット準備した。各ユニットを思考整理を主とする介入群,受容的介入群,介入なし群に割り当て,3時点にて心配,ネガティブな反すう,思考の制御困難性などの変数によって効果を評価した。その結果,対人恐怖のアナログ類型において,思考整理を主とする介入法による反すうの有意な低下が見られなかった。つまり,対人恐怖においては認知療法的な介入だけでは不安を残す可能性が示唆された。
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