研究課題/領域番号 |
23730656
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
竹田 伸也 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00441569)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 軽度認知障害 / 神経心理学検査 |
研究概要 |
本研究では、認知症の代表的疾患であるアルツハイマー病(AD)に移行しやすい軽度認知障害(MCI)をスクリーニングするためのツールとして、竹田式三色組合せテスト(TTCC;Takeda et al., 2010)の有用性について検討することを目的としている。TTCCは、3色の正方形の組合せからなる見本図形を記憶し、記憶と無関係な干渉課題を行った後に、3枚のカードを用いて記憶した見本図形を再生する課題である。MCIのうちTTCCで陽性および陰性を示した者のうち、3年間でAD発症率に差がないか否かを検討する予定である。 平成23年度は、まずMCIやAD、神経心理学検査に関するレビューを行った後、ADの重症度によってTTCC陽性者が示す課題の反応の仕方に違いがあるか否かを検討した。その結果、TTCCはADの重症度によって見本図形の再生の仕方に違いがあることが示された。見本図形と形は同じだが色が異なる場合ADの重症度は軽度であるが、見本図形と形も色も異なる場合ADの重症度は軽度から中等度であり、カードを用いた構成が不可能である場合はADの重症度は中等度から重度である可能性が示唆された。また、再生の仕方が悪くなると、被検者の認知機能も低下することが示された。 一方、TTCCのMCIに対する感度を捉えるため、MCIの被検者に対してTTCCを実施し、ADへの移行を予測し得る神経心理検査として有用であるか否かを検討するため、現在のところ半年ごとにMCIの被検者に対してTTCC及び関連する変数に関するデータの収集を実施している。 今年度の研究より、TTCCはADのスクリーニングのみならず、ADの重症度を予測し得る神経心理検査として有用である可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TTCCがADへの移行を予測し得る神経心理学検査であるか否かを検討するために、まずTTCCが認知機能の程度によって結果に違いが生じることを明らかにした。また、ADへの移行を予測するためにMCIへの被検者に対してTTCCを実施するとともに、半年ごとのデータの収集も開始した。したがって、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、引き続きデータの集積を行う。MCIのデータが一定数集まると、全MCI数を分母とし、TTCCで陽性と判定された者の数を除して、MCIに対するTTCCの感度を求める。 一方、MCIの対象者は半年ごとに医療機関受診の際に追跡調査を行い、AD等の認知症を発症していないか否かを確認し、Mini-Mental State Examination(MMSE; Folstein et al., 1975)及びClinical Dementia Rating(CDR; Morris, 1993) の実施と日常生活の様子についての面接を実施する。 診察は、研究協力者である専門医が行い、日常生活についての面接は、研究代表者および研究協力者であるコメディカル・スタッフが実施する。 3年間のデータの集積が終了すると、データ解析を始める。解析には、比例ハザード分析を用い、半年ごとのAD発症の結果を生存変数に、状態変数をAD発症の有無とし、独立変数にTTCC結果および年齢、性別、教育歴、MMSE得点等の要因を投入する。 以上の研究によって得られた知見について、国内外の関連学会で発表を行い、学会誌にその成果を投稿する予定とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用については、以下のように実施する。 まず、資料収集や調査のための旅費と、研究成果発表及び研究資料収集のための国内外学会での旅費として、研究費を使用する。 また、研究遂行上必要となるデータ解析用ソフトウェア、レーザープリンターインクジェット、データ保存媒体などの消耗品および研究関連図書費等の物品費として研究費を使用する。 一方、研究成果発表に関する投稿料や印刷費、翻訳料、外部機関などとの通信費等について、その他の費用として使用する。
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