研究課題/領域番号 |
23730664
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研究機関 | 茨城キリスト教大学 |
研究代表者 |
三澤 文紀 茨城キリスト教大学, 文学部, 准教授 (00438607)
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キーワード | リフレクティング・プロセス / リフレクティング・チーム / メンタルヘルス / 家族療法 / ナラティヴ・セラピー / 臨床心理学 |
研究概要 |
本研究は、家族療法の「リフレクティング・プロセス(RP)」の概念や方法を基に、一般社会人が問題解決に有効な方法の開発、並びに、各個人が問題の内省・熟考に有効な方法を開発のための基礎的知見の検討を目的としている。前年度に引き続き平成25年度も、一般社会人向けの方法の研究を中心に進めた。 具体的には、昨年度同様、若手小学校教員・講師による事例検討会の開催とその録画記録による参加者の言動や感想等の分析を行った。事例検討会は必ずRPの一技法である「リフレクティング・チーム・アプローチ(RTA)」の形式で行われた。昨年度、RTA形式の検討会参加の前に研修が必要、との結論に達していたが、研修必須となれば参加者への負担は大きく、RTA形式の検討会の一般的普及は難しい。この改善が、今年度の重要な課題であった。これまでの検討会の記録の分析・検討の結果、事例検討会の面接者(聞き手)が教員にとって難しい役であり、かつ事例検討の全体の流れを左右する重要な役であることが明らかとなった。この面接者(聞き手)の役を、相談経験のある教員、あるいは一定の研修を受けた教員が担うことで、他の参加者の研修なしでも効果の高いRTA形式の事例検討が可能であることが明らかとなった。また、職場(小学校)や年齢(教員歴)が同じ教員同士で行うよりも、職場(小学校)や年齢(教員歴)異なる教員同士で行う方が、多様な話し合いができるため効果的であることも明らかとなった。今年度は、こうした知見について学会発表と論文で公表することができた。ただし、RTAでは参加者に「参加者を否定する発言をせず、断言的でない控えめな発言をする」といった発言のルールが求められるが、こうしたルールの実施については適切な工夫を考案できていない。国内の他のRTA・RP研究者も解決できていない。その他の問題点を含め、今後改善や工夫をしていくことが求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度の家族の入院とその後の治療(5年間治療継続の見込み)のため、2013度も研究は大幅な遅れ取り戻すことはできていない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの遅れと家族の治療を考えると、昨年度の推進方策と同様、調査や実験は限定されると考えられる。 RTA研究は、一般社会人向け(特に教員)に実践するための工夫を中心に、焦点を絞って研究を進める予定である。また、RTAの実践については、国内の研究者との連携だけでは困難を打開できていないことから、海外、とりわけRTA発祥のノルウェーやRPの応用が盛んなフィンランドやデンマーク等での学術会議の参加や実践現場の視察が必要と考えられ、その可能性を模索している。 もう1つの研究の柱である内的会話研究についても大幅な遅れのため、基礎となる知見が充分に得られていない。まずは基本的な内的会話の手法についての基礎研究を進めていきたい
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次年度の研究費の使用計画 |
一昨年度の震災、昨年度の家族の入院とその後の治療(5年間治療継続の見込み)のため、2013年度の研究でも大幅な遅れ取り戻すことができていない。このため、当初計画していた調査や実験の一部が遂行できていないため、次年度使用額が生じている。 昨年度に続き、調査参加者への謝金、文献等の複写費や購入費が必要である。加えて、内的会話研究が順調に進んだ場合は、パソコン上でプログラム化するための費用や参加者謝礼、実施のための機材が必要となる。それから、学会参加を1~2回程度、そして研究会を数回程度予定しているため、そのための旅費も必要である。さらに、もし海外でのRP視察が可能となった場合、北欧の物価等を考慮すると、相当の旅費・滞在費が必要となる。 以上が、今年度の研究費使用予定である。
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