本研究は、家族療法の「リフレクティング・プロセス(RP)」の概念や方法を基に、一般社会人が問題解決に有効な方法の開発、並びに、各個人が問題の内省・熟考に有効な方法を開発のための基礎的知見の検討を目的としている。具体的には、2013年度まで、若手小学校教員・講師を参加者とし、RPの一技法である「リフレクティング・チーム・アプローチ(RTA)」の形式による事例検討会の開催、並びにその録画記録による参加者の言動や感想等の分析を行ってきた。 これまでの検討会の記録の分析・検討の結果、事例検討会の面接者(聞き手)が教員にとって難しい役であり、面接者(聞き手)の役の研修を受けることが必要であるとの結論に達していた。さらに、RTAでは参加者に特別な発言のルールが求められるが、こうしたルールの実施が難しく、やはり研修の必要性が生じる。以上のことから、RTA形式の検討会参加の前に研修が必要、との結論に達していたが、研修必須となれば参加者への負担は大きく、RTA形式の検討会の一般的普及は難しくなる。 前年度の2014年度では、RPが盛んに行われている北欧を視察し、RPの現状やトレーニングの方法について調査することとした。具体的には、最もRPが盛んとされるデンマーク、並びにRPの影響を受けて発展してきたオープンダイアログを実施しているフィンランドを視察した。その結果、これらの国々では相当のトレーニングを受けた人がRPを実施し、RP等を知らない一般社会人に実施する場合は、RP等のトレーニングを受けた2名をファシリテーターとして全体を統括しながら実施している例などについて知ることができた。 最終年度の2015年度では、デンマークでRPやオープンダイアローグを指導している臨床家と情報交換し、日本で得られないRPの情報を得ることができた。
|