研究概要 |
エクスポージャーは恐怖や不安に効果的な認知行動療法の技法のひとつである一方で、現在でも効果を高めるためにさまざまな改良が重ねられている。例えばAcceptance and Commitment therapy(Hayesら,1999)Tabibniaら(2008)により言語の役割が注目されている。このことを受け、本研究でもエクスポージャー中の注意の変動について検討することを目的とした。とくに、本研究では非接触型の視線解析装置(アイトラッキング)を用いて、視覚的注意の観点から検討を試みた。昨年度まではエクスポージャーのターゲットとして言語刺激と画像刺激とでは視覚的注意が異なっていることを明らかにした。今年度はさらに主観的評価との関係についても検討を行った。その結果、アイトラッキングで得られたデータと、注視時間の主観的評価および意図的な回避傾向との間の相関関係においても、刺激の種類よる違いが確認された。具体的には、言語刺激の主観的評価と総注視回数の間でも有意な負の相関が確認され、また画像刺激で有意な負の相関が確認された意図的な回避傾向は、言語刺激の場合には有意な相関は確認されなかった。一方、恐怖や不安についての個人特性についての操作、画像および言語刺激を用いた際の描写対象の統一のむずかしさ、実験手続上の課題としてスライドではなく心理学実験用ソフトウェアを用いた方法の模索、などが昨年度までの課題として挙げられた。すでにe-primeをもちいた実験プログラムを準備したが、研究協力を得やすい単一恐怖症を測定する評価方法が日本にはないなど、新たな事項が課題としても挙げられた。最後に、アイトラッキング装置を用いた研究は臨床心理学分野ではまだ始まったばかりであり、エクスポージャーの発展を念頭に改めて課題を整理した。
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