研究課題/領域番号 |
23730674
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
松本 圭 金沢工業大学, 基礎教育部, 講師 (40367446)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 臨床心理学 / 認知行動療法 / 認知バイアス |
研究概要 |
本研究では、認知バイアスを複数同時に計測し、それらが社交不安に与える影響を多面的に検討し、1) 認知バイアスの各指標と社交不安の相互作用を明らかにすると共に、2) 認知行動療法の技法によってもたらされる社交不安低減のメカニズムを明らかにすることを目的としている。特に平成23年度は、研究に用いる実験課題の信頼性・妥当性を確認することを第一の目的とした研究を実施した。 具体的には、高社交不安者が有するとされる解釈バイアス(あいまいな対人関係場面をネガティブな出来事であると解釈する傾向)を測定するための動画刺激(知人にあいさつするが、あいさつの返事がないまま通り過ぎるなど)を、先行研究を参考にしながら作成した。現在、その動画刺激を様々な社交不安水準の実験参加者に提示し、場面の捉え方を回答してもらう評価を実施中である。 また自己評価バイアス(自分の発表やスピーチなどのパフォーマンスを実際以上に低く自己評価する傾向)を測定する質問紙について、その妥当性の評価を行った。約20名の大学生を対象にスピーチを実施してもらい、そのスピーチに対する想像上での自己評価、自分のビデオ映像を視聴した上での自己評価、第三者からの自己評価を、それぞれ質問紙によって回答してもらい、実験参加者の社交不安水準との関連を検討した。その結果、高社交不安者は、他者の自己評価と比較した場合に、想像上での自己評価が過度に低く見積もられていることが明らかになった。またビデオを視聴して自己評価した場合には、その傾向が弱まり、ビデオフィードバックの効果を示す結果ともなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、主に認知バイアスを測定する方法の確立を目指すことを目的としていた。筆者がこれまでも研究テーマとしていた注意バイアスに加え、解釈バイアス、自己評価バイアスの測定方法を考案し、またその測定方法の妥当性を確認することができた。次年度以降の研究に使用する実験課題が確立されたことから、おおむね順調に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に考案し、妥当性を確認した方法を用いて、1) 認知バイアスの各指標と社交不安の相互作用を明らかにする、2) 認知行動療法の技法によってもたらされる社交不安低減のメカニズムを明らかにするという2つの目的の達成を目指す。 1)については、平成24年度から最終年度である平成26年度まで継続的に、同一の実験参加者に各認知バイアスを測定する実験を実施し、認知バイアス間の相互作用と、それが社交不安に与える影響を明らかにする。最終的には100名程度の実験参加者を募り、データを蓄積する予定である。 2)については、平成24年度から最終年度まで、毎年、高社交不安者を対象とした集団認知行動療法を実施し、その前後で実験参加者に実験課題を実施、介入による変化を明らかにしてゆく。1年に20名程度の実験参加者を募り、最終的には60名程度の実験参加者のデータを蓄積する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果の発表のための旅費、実験参加者への謝金、集団認知行動療法の実施補助やデータの入力整理のためのアルバイト代、データの分析のためのソフトウェア購入、データ保存のためのメディア購入等が主な使用用途となる。
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