研究課題
今年度は,社交不安障害(Social Anxiety Disorder;以下SADとする)に関する認知行動的要因の機能についての基礎的検討を進めるとともに,集団認知行動療法を実施し,その効果についての検討を進めた。基礎的検討においては,SADの維持・増悪要因とされるコストバイアスに加え,緩衝要因となる可能性がある,不安のコントロール感に関する基礎的検討を進めた。コストバイアスについては,従来の研究において指摘されている通り,SAD症状に対する強い影響が認められた。また,不安のコントロール感の機能に関する基礎的検討を進めたところ,不安感情に対してストレスコーピングよりも関連性が高く,不安の減弱を進めるうえで,効果のある要因である可能性が示唆された。今後は,コストバイアスと不安のコントロール感との関係性についても検討を進めていく予定である。また,介入研究として,SAD患者に対する集団認知行動療法の実施を進めた。従来の認知行動療法的アプローチに加え,コストバイアスの変容を促進するよう,エクスポージャー実施前後の認知的介入に重点を置き,プログラムを進めた。治療効果のエフェクトサイズを算出したところ,比較的高い治療効果が認められている。しかし,サンプル数については十分ではないことから,今後蓄積を進めることが求められる。これらの成果の一部は,対象者の同意を得たうえで,プライバシーに十分な配慮を行ったうえで,事例研究として公表を進めている。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究においては,SADの認知行動的要因に関する基礎的研究と,介入研究を並行して実施を行っている。当該年度は,集団認知行動療法を実施するなど,介入研究をスタートする年度であり,おおむね計画の通りに研究は進行をしていると考えられる。
次年度以降については,集団認知行動療法に加え,個人認知行動療法のプログラムについても実施を行うことが予定されている。そのため,対象者を確保したうえで,介入研究を実施していくことが必要になる。なお,平成25年度に研究代表者の研究機関の所属変更があることから,プログラムの実施場所の変更が余儀なくされるため,工夫をすることが必要となる。
研究計画の実施を行う上での必要経費として使用をするほか,研究成果の公表にかかわる,事務用品費,物品費としての使用を計画している。また,これまでの研究成果を報告するうえでの,学会出張費,研究成果発表に関わる経費,論文校閲に関わる費用などを使用する。また,研究実施・取りまとめ・成果公表において必要となる書籍などの購入費用としても用いる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
認知療法研究
巻: 6 ページ: 55-68
International Journal of Cognitive Therapy
巻: 5 ページ: 77-85
10.1521/ijct.2012.5.1.77
東海心理臨床研究
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