今年度の研究は,社交不安障害(Social Anxiety Disorder;以下SADとする)の個人認知行動療法プログラムに関する実施を進め,集団認知行動療法との効果の比較検討を進めることが主たる目的であった。 個人認知行動療法のプログラムについては,12名がプログラムを完遂した。主たる評価尺度であるLiebowitz Social Anxiety Scale (朝倉他,2002)や,Social Cost / Probabilty Scale(城月・野村,2009)などの指標に関しては,プログラム実施により有意な改善が認められた。また,関連する指標である注意バイアスについての比較についても進め,SAD傾向の低い大学生と比較した際に,社会的脅威語と中性語の反応の差が,SAD患者では大きいことが示された。 集団認知行動療法と比較した場合には,治療効果の有意な違いは認められず,双方ともにほぼ同等のSAD症状の改善があることが示唆された。個人療法の形式と集団療法の形式については,それぞれに有用性や実施上クリアすべき点が存在する。実践的にプログラムを活用するには,双方の違いを踏まえたうえで,利用者と各機関のニーズや実情を考慮した実施が求められることが指摘された。
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