研究課題/領域番号 |
23730683
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
角田 美華 (樋町 美華) 福山大学, 人間文化学部, 講師 (20550974)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 成人型アトピー性皮膚炎 / 痒みに対する不安 / 心理的プログラム |
研究概要 |
23年度は,成人型アトピー性皮膚炎(AD)患者の痒みに対する不安を軽減するための心理的プログラムを構築するために必要となる要素を明らかにし,そこからプログラム案を構築することであった。そのため,まず23年度は成人型AD患者と自己申告による健常な成人を対象として調査を行い,痒みに対する不安とその他の不安との関連性の検討を行った。ここで,調査を行った意義としては,調査の結果これまで成人型ADと関連していることが指摘されている不安と痒みに対する不安との関連性が示された場合,これまでに用いられている不安軽減のためのプログラムの利用が可能となると考えられたためである。調査の結果,AD患者は全般的に不安が高い者と身体面に関連する不安が高い者の2つに分類されることが明らかとなった。さらに,重症度によっても不安のタイプが異なることが明らかとなった。本結果から,先行研究で用いられている不安軽減プログラムの複数の要素を組み合わせる必要性が示唆されたといえる。 さらに,23年度はこれまでAD患者を対象とした心理的プログラム(特に不安軽減を目的としたもの)についてのレビューも行った。レビューを行った結果,成人型AD患者の不安軽減にはリラクセーションやディストラクションといった技法が多く用いられており,不安のみならず痒みや掻破行動にも効果的であることが示唆された。このことから,痒みに対する不安軽減には,リラクセーション法やディストラクションといった技法の利用が効果的であると考えられる。また,痒みに対する不安は経験に基づく場合があるため,経験によって固められた認知の変容も必要である。以上の結果から,23年度に行われ調査および先行研究のレビューは重要な役割を果たしているといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来ならば,24年度は4月から介入研究を実施する予定であったが,以下の3つの理由から現在やや遅れている状況にある。 1つ目の理由としては,プログラムマニュアルおよび教育用配布資料の作成が遅れていることがあげられる。現在,プログラムの各回に必要なマニュアルおよび教育用配布資料を作成している段階であるが,必要な要素をもれなく記載した詳細なマニュアルおよび冊子を作成しなければならないため,やや遅れた状態である。 2つ目の理由としては,研究計画立案の段階で予想されていたように対象者の確保が計画よりも遅れていることがあげられる。本計画では,集団プログラムを実施する予定であるため,一定の人数を集める必要がある。その場合,参加同意を得られた対象者のスケジュール調整が必要であり,それらが整った段階で実施可能となる。現在,第1グループを実施するための調整を行いながら,第2グループへの参加者を検討している段階である。実施時期をずらすことは,統制群として対象者を振り分けることが可能になることから,計画に問題はない。 3つ目の理由としては,対象となる患者への謝礼があげられる。金券が謝礼として利用不可能なため,謝礼をどのように取り扱うか協力機関と現在検討中である。謝礼について,研究者所属機関および協力医療機関と一定の合意が得られた時点で対象者へのプログラムを実施していく必要がある。このような状況から,プログラムの実施が当初の予定よりも遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
現在,他の助成金等による研究は行っておらず,本研究費のみの研究を進めていることから,次年度も引き続き本研究を中心に実施していく。今年度は,当初4月からプログラムを実施する予定であったが,マニュアルおよび教育用配布資料の作成の遅れや,謝礼の問題等から遅れている状況にある。そこで,上記の問題を早急に解決し,プログラムの実施方法の一部を修正して進めることを予定している。修正としては,当初予定ではそれぞれのグループが終了後に次グループへのプログラム提供を行う予定としていたが,それをスケジュールの調整を行い第1グループの実施後半から第2グループの実施を開始することを検討している。このように時期を調整することで,遅れている状況を改善することは可能である。 実施予定としては,第1グループは6月中旬をめどに開始し,おって第2グループのプログラムを開始することを検討している。また本研究は,25年度に効果の持続性を検討するためフォローアップの機会を設けているが,次年度,予定通りに進まないような状況になった場合には,25年度もプログラムを引き続き実施する。このような状況は,当初から想定されているため問題とはならない。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,23年度に構築した成人型AD患者の痒みに対する不安軽減のための心理的プログラムを実施し,その効果検討を行う予定である。プログラム内容は,同意を得られた者に対して説明を行い,その後,心理教育,痒みに対する不安を変容させるための認知的介入,不安を軽減するためのリラクセーション法の習得,不安および痒みそのものを軽減する効果が認められているディストラクションの習得といった4つの要素から構成されている。なお,リラクセーション法およびディストラクションの習得は,それぞれの効果を検討し,最終的には有効であると判断されたものをプログラムの構成要素とすることを検討している。このプログラムへの参加に同意が得られた者を対象者として実施するが,実施の際には対象者は複数のグループ(異なる時期)に振り分けられる。このプログラムを実施するにあたり,研究参加者には参加回数に合わせて謝礼を渡すため,次年度はこの謝礼を研究費から使用する予定としている。 さらに,次年度はプログラムを実施した結果,その効果を検討することも目的としているが,効果を検討する際の統計解析方法を習得するため,さまざまな学会へ参加し知識を得ることを予定している。本研究は,少人数のグループによるため,大規模データに対する統計解析の使用が困難である。そのため,少人数を対象とした適切な統計解析を使用する必要があり,それらの知識は現状では不足しているといえる。この問題を解決するために,行動療法学会および国際行動医学会へ参加し最新の知識をみにつけることを予定している。この際に,研究費を使用することを予定している。加えて,学会などへ参加しさまざまな介入研究を参考に,今後の修正点などを検討することも予定している。本研究の結果については,今年度心身医学会や日本心理学会,行動療法学会で公表しさまざまな専門家から意見を得ることも予定している。
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