本研究では、「解離の多次元アセスメントと心理援助法の開発」を研究目的とする。筆者が開発した日常的解離尺度を改訂し、これまでより広範囲な対象者と心理援助法の選択(力動的心理療法、認知行動療法etc)へと調査範囲を広げ、解離に対するエビデンスに基づいた心理査定・援助法を開発する。最終年度である平成25年度は、青年期大学生群386名のデータを用い、統計解析を行った。分析の結果、平成23年度に作成した日常的解離尺度改訂版の安定した5因子構造、再検査信頼性、基準関連妥当性が確認された。次に患者群のデータ収集については、最終年度も継続して調査を行った。結果、190名(平成26年3月31日現在)のデータを得ることができた。150名までの統計解析結果は既に平成24年度で報告しているが、最終的な統計解析結果について次年度以降学会発表・論文化をしていく予定である。更に、最終年度はこれまでデータ収集を行ってきた心的外傷体験が不明確な解離性障害成人患者3名に、思春期事例1名を追加し、心理検査結果の共通点・相違点を検討することができた。しかし、ロールシャッハ・テストの解離傾向と改訂版尺度の高さは必ずしも一致しない、という結果となった。この結果は、改訂版尺度の問題によるものか、投映法で表出される解離傾向と心理尺度上の解離傾向が必ずしも一致しない可能性の両者が残されている。従って、今後も事例累積を行い、詳細な検討が必要である。
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