研究課題/領域番号 |
23730685
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研究機関 | 東海学院大学 |
研究代表者 |
松田 侑子 東海学院大学, 人間関係学部, 講師 (10598717)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 肯定的資源 / 就職活動 / キャリア発達 / 心理教育的援助 / 強み |
研究概要 |
本研究は,就職活動を促進する,個人の肯定的資源を活用した介入プログラムを開発し,効果を検証することを目的としている。平成23年度に実施された主な研究の内容は以下の3つであった。 まず,肯定的資源の発見・活用に関する文献資料の分析(研究1)においては,肯定的資源やポジティブな心理的介入に関する包括的な理解を目的とした。欧米のポジティブ心理学に関する最新の文献を収集し,以降の介入プログラムの開発・実施に必要な基礎資料として整理を行った。 次に,就職活動における肯定的資源の発見・活用に関する面接調査(研究2)では,就職活動を経験している者を対象とし,就職活動を行う中で個人の肯定的資源(強み・長所)をどのように発見・活用したか,その障害となる妨害要因に関して整理を行い,プログラム開発への示唆を得ることを目的とした。12名のインフォーマントとの面接を通じて,就職活動だけではなく日常的にも強みへの意識や積極的な活用はほとんどなされていないこと,強みの発見には強みそのものや,発見・活用に対する考え方が大きく関わっていることなどが明らかとなった。また,強みの発見・活用に関連する要因として,自己卑下的な自己呈示,自尊感情,自己志向的完全主義が整理され,介入可能性が示唆された。 また,研究2で明らかとなった,強みそのものや,強みの発見・活用に関する認知については,これまでの研究で包括的に扱われておらず,測定する尺度が先行研究では見当たらないため,尺度を構成する必要性が浮き彫りにされた。今後の介入におけるアセスメントにも有用であると考えられるため,項目収集を行い,平成24年度に尺度作成を行うこととなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究1から研究2においては,研究実施計画にほぼ沿う形で終えた。特に,研究2の面接調査においては,インフォーマントの募集が円滑に進み,当初予定していた調査期間において,一定のデータが得られたことが大きい。 しかし,研究2の面接調査の結果から,介入ポイントとして,強みに関する認知や,強みの発見・活用に関する認知・行動が重要であることが浮き彫りとなった。これらを測定する既存の尺度は先行研究においては見当たらず,アセスメントツールとして今後用いるためにも,本研究の一環として尺度作成を行う必要性が生じた。調査協力者の負担などを考慮すると,介入ポイントの整理に関する研究3の質問紙調査の前に,当初は予定していなかった尺度作成の質問紙調査を個別に行う必要がある。平成24年度においては,尺度作成後,研究3の質問紙にそれらを追加し,調査を実施する予定である。以上の理由により,研究3の実施がやや遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として,まず,平成24年度では介入の実施やフォローが中心となるため,プログラムをより円滑に進める上で,研究補助者の積極的な雇用が必要であると考えている。特に,介入開始に伴い,数ヶ月間にわたって,データ入力,心理教材の印刷・製本,郵送処理といった業務が定期的に生じてくるため,こうした事務処理を行ってくれる研究補助者の存在が,研究の推進には欠かせないものといえる。 また,平成23年度に行った面接調査を通じて,当初の計画には盛り込まれていなかった尺度作成を研究として追加することが必要となった。今後の介入計画を考慮すると,介入ポイントの整理に関する質問紙調査の実施・分析を速やかに終えることに留意しなくてはならない。従って,十分なサンプルの確保や多様な大学に在籍する学生を対象とできる利点に加え,より速やかな調査の実施を目指し,外部委託のweb調査を利用することを視野に入れている。 さらに,平成23年度には本研究の成果をアウトプットする機会がなかったが,平成24年度以降では学会等でのアウトプット・インプットを通じて,さらに介入プログラムの内容を洗練させることも継続的に行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度においては,平成24年度に使用する予定の研究費が生じた。これは,平成23年度より所属機関が変わったため,当初に予定していた研究費の使用計画に変更が生じたこと,研究補助者の雇用がほとんどなかったこと,質問紙調査の実施時期が平成24年度へとずれ込んだため,それにまつわる経費がかからなかったことの3点に主に由来している。しかし,当初予定していた研究計画には,調査が1つ追加された点以外に大きな変更はなくい。平成24年度においては,主に以下の四点を柱とした研究費の使用を計画している。 まず第一に,質問紙調査の迅速な実施を実現するために,外部委託のweb調査を利用することである。これにより,相当のサンプルを確保し,偏りのない様々な大学に在籍する大学生を対象とできるという利点に加え,データ入力等の事務処理に要する労力・時間を削減することができる。第二に,平成23年度における研究成果をアウトプットするために,国内外の学会発表を精力的に行うことである。特に,International Conference of Time Perspectiveへの参加・発表を通して,キャリアやポジティブ心理学における最新の研究知見の見聞に努める。第三に,平成24年度においては,介入プログラムの実施とそれに基づいたプログラムの修正が中心となり,調査協力者には継続的な郵送費・謝礼を要することが挙げられる。最後に,介入の実施にあたって,データ入力,心理教材の印刷・製本,郵送処理,最新の海外文献の翻訳等を円滑に行うための,研究補助者を雇用することとする。
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