【具体的内容】本研究の目的は、自死遺族ケアをめぐる実情、つまり遺族が自らのグリーフワークにおいて能動的に意味を再構成することが難しく、他者とのコミュニケーションを希求していることに配慮し、ナラティヴ死生学の観点から、自死遺族が自らの死別経験を物語として再構成し、他者と対話するためのツールとなる、ナラティヴ・ワークブックを開発することである。3年目の最終年度にあたる平成25年度においては、昨年度確定したコンテンツ案、すなわち意味再構成理論およびナラティヴ・プラックティスの方法論をもとにしたものをもとに、ワークブックを完成させた。また作成途中において、グリーフカウンセリング、自殺予防、ナラティヴプラクティス、自死遺族支援に関する複数の専門家へのヒアリングを行った。同時に、複数の自死遺族へのヒアリングも行い、ワークブックの内容を修正した。最終的なコンテンツは、大きく「ワークブック編」「解説編」の2部で構成されており、前者のワークブック編には3つの学びなおし(自己の学びなおし、故人との関係の学びなおし、世界の学びなおし)に対応する複数のワークが収録されている。ワークブックはすでに出版社に入稿済みであり、本年の夏頃に刊行の予定である。 【意義】これまでポストベンションに関する研究は少なく、またそれを直接、自死遺族ケアの実践に結び付けようとする研究は見当たらない。死生学や自殺学において常に指摘される、研究と実践現場の乖離を克服しうるものである。またワークブックの書籍化が進められており、これにより本研究の成果を広く世に発信することができる。 【重要性】自死遺族が能動的に取り組めるワークとともに、他者とのコミュニケーションにつながる仕掛けを盛り込んだナラティヴ・ワークブックが開発された。これは自死遺族ケアをめぐる実情を改善すると同時に、自死遺族のセルフヘルプに直接的にむすびつくものである。
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