研究概要 |
本研究課題では「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の偏りない地域住民を対象とした大規模なコホート研究のデータを用い、中高年者のワーク・ファミリー・シナジー(仕事と家庭の相互作用)に関する心理プロセス解明を目的とした。具体的には、ワーク・ファミリー・コンフリクトとファシリテーション(WFC/WFF)尺度を用い、両立のネガティブとポジティブの両側面を含む包括モデルを構成することである。 1.具体的内容:H24年度は、(1)心理面接調査により、WFC/WFF尺度、個人背景要因、仕事と家庭の規定要因、精神的健康、などのデータ収集(NILS-LSAの第7次調査H22.7からH24.7)を実施し、データセット作成を完了した。(2)成果:完成したデータセットを用い、第7次調査に参加した2,330名のうち有職者である1,351名を対象に、中高年者のWFC/WFF尺度に関してAMOSを用いた確認的因子分析により想定した因子構成を確認し、性・年代による差異を明らかにした。また、心理プロセス解明のため中高年者の仕事と家庭関与・WFC/WFF・精神的健康の関係を多母集団同時分析により明らかにした。さらに、WFC/WFFと心理的well-beingとの関連性についても階層的重回帰分析を実施し、中高年者のWFC/WFFが心理的発達側面にも影響があることを示した。(3)研究発表:上述の結果については学会発表を行い、論文投稿準備を進めている。 2.意義・重要性:高齢化社会における中高年者のワーク・ファミリー・バランスは重要な課題である。中高年者のWFC/WFF尺度の構成が確認され、ワーク・ファミリー・バランスが精神的健康、心理的well-beingとの関連性が実証されたことは、就業支援策展開にもつながる知見であり意義深いと考えられる。
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