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2011 年度 実施状況報告書

視覚及び前庭覚による自己運動情報が聴覚空間形成に及ぼす影響の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23730693
研究機関室蘭工業大学

研究代表者

寺本 渉  室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30509089)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード前庭器 / 直線加速度 / 聴覚 / 音源定位 / 多感覚統合
研究概要

自己運動時には感覚入力は時々刻々と変化する。それにもかかわらず,我々は周囲の環境を安定的にとらえ,適切な働きかけを行うことができる。この知覚の背後には自己運動情報を巧みに利用した情報処理の仕組みがあると考えられる。本研究では,周辺視野も含む視野全体の動きによって与えられる視覚的自己運動情報と前庭情報が,自己運動時の聴覚空間形成において果たす役割を,自己運動の方向/加速度/速度や聴覚刺激の提示位置を系統的に操作し,その際の音源定位行動を測定することによって明らかにすることを目的とする。本年度は,自己直線運動が聴覚空間形成に及ぼす影響を調べ,視覚+前庭,前庭のみ自己運動情報源それぞれについて検討を行った。前庭刺激の提示には,自走式車椅子装置を用い,聴覚刺激の提示には,車椅子の進行方向に沿って10cmおきに21個並べられたスピーカアレイを用いた。車椅子があらかじめ決められた位置を通過した瞬間,聴覚刺激を任意の位置から提示し,聴取者に定位させた。(視覚+前庭)条件では,被験者開眼のまま車いす型装置を走行させた。前庭のみ条件では被験者にはアイマスクをさせる前庭刺激を提示した。その結果,前方への加速度運動時にのみ,音源までの距離が過小評価され,過小評価量は加速度の増加に伴って線形に増加することがわかった。その後の実験から,進行方向側音空間が圧縮して脳内に表現されているために生じる可能性が高いことがわかった。さらに,この現象は視覚情報の有無にかかわらず生じることから,前庭系のもたらす自己運動情報が重要な役割を果たしていることがわかった。次年度以降,運動方向や視覚情報をさらに操作して,現象の一般性が実証できれば,自動車運転時の音情報提示技術開発等に説得力のある提案ができると考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

自己直線運動が聴覚空間形成に及ぼす影響を調べ,視覚+前庭,前庭のみ自己運動情報源それぞれについて検討を行うという研究目的に対して,設備の導入及びそれを用いた実験が順調に進み,成果の一部についてすでに学会等で発表し,論文も投稿済みである。したがって,おおむね順調に進展しているものと判断できる。

今後の研究の推進方策

【平成24年度】平成23年度は耳石器系の働きに絞り,検討を行ったのに対して,平成24年度は三半規管系に焦点を当てる。すなわち,ヨー軸周りの自己回転運動が聴覚空間形成に及ぼす影響を解明する。特に,パラメータの操作が比較的容易な視覚的自己運動情報を中心に扱い,加速度・速度・方向ごとに聴覚空間マップを作成する。この目的を達成するため,平成23年度に用いたスピーカアレイを視覚刺激提示の邪魔にならない位置に設置し,聴覚刺激提示装置一式と視覚刺激提示装置の接続を行う。実験では,ドットパターンによって構成される視覚運動刺激の速度・加速度・回転方向を系統的に操作し,自己運動感覚を生起させ,その間にあらかじめ決められたタイミングで聴覚刺激を任意の位置から提示し,聴取者に定位させる。【平成25年度】平成24年度はヨー軸周りの回転に関する視覚的自己運動情報が聴覚空間形成に及ぼす影響を調べたのに対し,平成25年度は前庭情報の影響を検討する。前庭回転運動刺激は,刺激の性質上,試行を多数回行うことはできない。そこで,平成24年度のデータを参考にし,操作パラメータを絞り込み実験を進める。

次年度の研究費の使用計画

申請額より低廉な額での備品の調達,実験が順調に進んだことによる謝金等の実験諸経費の減額,旅費等の費目の節約によって繰り越し金が生じた。平成24年度は前年度使用した聴覚刺激提示装置一式を視覚刺激提示装置に接続し,大型スクリーンに視覚刺激を提示する環境下で聴覚定位実験が行えるように実験装置を改良するが,繰り越し分はその際の費用として用い,より高精度な測定が行えるようにする。次年度の予算にはその他に,実験時の被験者謝金,研究成果発表旅費,論文投稿に関わる諸経費等をその他に計上している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 自己運動に伴う音空間の圧縮2012

    • 著者名/発表者名
      寺本渉, 古根史雅, 坂本修一, 行場次朗, 鈴木陽一
    • 雑誌名

      日本音響学会聴覚研究会資料

      巻: 42(1) ページ: 11-16

    • URL

      http://ci.nii.ac.jp/naid/40019203096

  • [雑誌論文] ベクション知覚時の音像定位-空間参照枠の影響について-2012

    • 著者名/発表者名
      崔正烈,寺本渉,坂本修一,岩谷幸雄,鈴木陽一
    • 雑誌名

      日本音響学会聴覚研究会資料

      巻: 42(1) ページ: 5-10

  • [学会発表] Distortion of auditory space during linear self-motion.2011

    • 著者名/発表者名
      Teramoto, W., Furune, F., Sakamoto, S., Gyoba, J., & Suzuki, Y.
    • 学会等名
      International Multisensory Research Forum
    • 発表場所
      Acros Fukuoka
    • 年月日
      2011年10月17日

URL: 

公開日: 2013-07-10  

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