研究課題
乳児期の身体運動発達と視覚機能の発達との間の相互作用について、特にずりばいやハイハイなどの移動行動と、移動行動制御における主要な視覚情報源となる光学的流動(視覚的に認識される動きのパタン)の知覚との関係に焦点をあてた、実験的検討を実施することを目的とした。前年度から引き続き、複数の光学的流動に対する知覚の特性を測定する行動実験と、移動行動の発達を評価する行動観察をセットにした実験手続きを、生後1年未満の乳児を対象に毎月1回の頻度で縦断的に実施した。その結果、ずりばい、ハイハイなどの移動行動を初めて可能になる月齢期間から遡って1ヶ月前頃から、移動行動の制御とは関連の低い光学的流動に対する知覚が抑制されることが明らかになった。一方、移動行動と関連の深い光学的流動に対する知覚は移動行動の獲得前後で抑制が生じることは無かった。これらの結果は、(1)ずりばい、ハイハイなどの移動行動の発達に先駆けて、そうした身体運動と関連の深い視覚機能、関連の低い視覚機能の間のバランスが変化してくること、(2)そうした視覚機能の発達的変化が、直後に生じる身体運動発達を促進する可能性があること、を示唆するものである。従来の発達心理学的研究からは、発達初期の身体運動と視覚との間には、前者の発達に導かれて、後者の発達が促される側面があることが強く主張されてきた。本研究の成果は、そうした従来の発達観に新たな視点を付与し、移動行動のような日常的な行為の発達について基礎科学的な知見を提供した点で重要な意義を持つ。また今後は、過去に報告されている身体運動発達の遅滞に関するいくつかの調査結果と、本研究の成果との関係を詳細に検討することによって、ハイハイなどの移動行動の発達的個人差の生起要因を明らかにすることができるかもしれない。
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