研究課題/領域番号 |
23730702
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
小川 洋和 関西学院大学, 文学部, 准教授 (90507823)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 選好処理 / 潜在学習 / 視覚的注意 |
研究概要 |
本研究計画では、無意識的学習パラダイムを応用した新しい実験系を構築し、複雑な視覚場面における選好・印象形成過程の心理的メカニズムの解明を目指す。まず、対象の物理的特徴と観察者の来歴の効果がどのように相互作用するかに着目して実験的検討を進める。さらに、視覚場面の全体的特徴に対する処理と場面を構成するオブジェクトという局所的特徴に対する処理の関係を明らかにすることによって、複雑な場面における選好・印象形成過程を解明することを目指す。本研究計画では、「実験系の確立」「刺激の物理特性と観察者の来歴の相互作用の解明」「視覚場面の全体的特徴と局所的特徴の相互作用」の3つのサブゴールを設定しており、本年度は前者2つのサブゴールに取り組む計画であった。 まず、実験刺激のデータベースを作成するところからスタートした。視線方向などを画像処理によって操作し、約450枚の顔写真からなる刺激データベースを完成させた。その上で、顔刺激に対する潜在学習による選好の変化を視線手がかり課題(Bayliss & Tipper, 2007)を使って検討する実験系を確立した。「刺激の物理特性と観察者の来歴の相互作用の解明」として、顔刺激の持つベースの魅力度と観察者の来歴の関係を明らかにするために、実験内での刺激の呈示回数によって観察者の来歴を操作し選好の変化への影響を検討した。その結果、一回のみ呈示された顔刺激に対して最も魅力度(信頼性)が高いと評定されたが、このバイアスは呈示回数が増えるにつれて減少することがわかった。これは先行研究の結果とは逆の傾向であるが、個別の刺激処理に課題全体の構造が影響していると考えれば、結果の違いを説明できる可能性がある。現在検討を進めており、その成果は次年度の国内・国際会議にて報告される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の最終的な目標を達成するために設定したサブゴールのうち「サブゴール1:実験系の確立」については、刺激データベースを完成できたこと、ある程度頑健に潜在学習効果を確認できる実験パラダイムを確立できたことから、ほぼ達成できたと考えている。「サブゴール2:刺激の物理特性と観察者の来歴の相互作用の解明」については、ある程度進行させることができたが、当初予想されていなかった現象(呈示回数の増加に伴う選好の低下)が観察されたため、ゴールを達成するには至っていない。現在このメカニズムについて検討を進めているが、この現象が課題全体の構造と個別刺激処理の相互作用によって説明できるのであれば、研究段階では想定していなかった認知過程を検討するための実験系を確立したこととなり、新しい研究知見を提供することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は研究計画の推進を図るために、より実験を効率的に行う環境を整える。そのために、(1)被験者募集システムの確立、(2)実験補助員の雇用、(3)実験ブースを増設するなどの対策を計画している。これらにより、実験データの収集→データの検討→新しい実験計画立案のサイクルのスピードを向上させる。前年度に新しく得た研究知見を元に新たな実験計画を立案し、着実に研究を遂行していく。具体的な実験計画としては、ターゲット刺激の呈示位置の手がかりを顔の視線方向によって与える視線手がかり課題を引き続き用いて検討するつもりである。課題内で、個別の刺激の呈示回数と課題の全体構造を独立して操作することによって、この両者が選好処理に与える影響を検討することができる。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度は予想外の実験知見を得たことによる計画修正のため、当初想定していたよりも実験実施回数が少なかった。そのため、実験補助員および被験者に対する謝礼額が予定より少なく、繰越金が発生した。平成24年度の研究費は、主に被験者・実験補助員に対する謝金、実験機器の購入(実験用PC・聴覚/視覚刺激デバイスなど)および成果報告のための学会出張旅費に支出する予定である。特に実験ブースを増築することにより、より効率的な実験実施を達成し、研究目的の達成をより確実なものにする。
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