日常生活において、我々は、眼の前に存在する物体を観察しながら、眼の前にはない別の物体を連想し、脳内に保持された物体の記憶表象と、眼の前の物体の知覚表象の関係性を判断することがある。本申請課題では、平成23年度に引き続き、連想記憶におけるカテゴリー間の結びつけ情報と、ワーキングメモリーにおける関係性結びつけ情報の相互作用の行動特性を明らかにするため、物体同士の対連合情報を事前学習した実験参加者(大学生、大学院生)を対象に、連想記憶に基づく変化検出課題を用いた。変化条件は、見本画面とテスト画面の物体情報の関係性に基づき、位置の変化なし、または位置の変化ありとした。その結果、連想記憶に基づく変化検出課題の遂行は可能であり、見本画面とテスト画面に呈示される項目数の増加に伴って、正答率が低下した。変化のタイプごとに正答率を比較すると、位置の変化なし条件よりも位置の変化ありタイプの正答率が低かった。さらに、連想記憶の想起方向が課題遂行に影響を及ぼした。これらの結果は、見本画面における物体呈示の時間的差異の影響を受けていなかった。また、fMRIにより、連想記憶に基づく変化検出課題遂行中の脳活動を、ワーキングメモリーに基づく変化検出課題遂行中の脳活動と比較した。その結果、ワーキングメモリーに基づく変化検出課題と比較すると、連想記憶に基づく変化検出課題遂行中は、前頭-頭頂ネットワークの広範な活動が観察された。特に、連想記憶に基づく変化検出課題の遅延期間において、見本画面に呈示された物体カテゴリーではなく、連想相手であるテスト画面に呈示された物体カテゴリーの表象に関わる脳部位が、呈示項目数の増加に伴って賦活していた。
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