研究課題/領域番号 |
23730706
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
近久 幸子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00452649)
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キーワード | 睡眠 / ケトン体 |
研究概要 |
ケトン体は脂肪の分解により肝臓やグリア細胞で作られ、高脂肪食、絶食、過度の運動等のグルコースが枯渇した状況下において主要なエネルギー源となる。我々はこれまでに、ケトン体合成に重要な役割を果たすperoxisome proliferator-activated receptors alpha (PPARα) の睡眠制御との関連性について検討を進めるうちに、ケトン体自体の関与に着目した。本研究ではアセト酢酸やβヒドロキシ酪酸等のケトン体が、睡眠ホメオスタシスにおいてどのような役割を果たすかについて検討した。 始めに、8週齢の野生型雄マウスの脳室内にmorpholino antisense oligoを投与することによって、中枢PPARαをノックダウンさせたところ、ノンレム睡眠時の脳波デルタパワーが減弱するとともに、血中ケトン体比 (アセト酢酸/βヒドロキシ酪酸) の低下が認められた。次にマウスに6時間の断眠を行ったところ、血中ケトン体比の増大、ケトン体代謝酵素succinyl-CoA-3-oxoacid CoA transferase (Scot) mRNAの発現低下が大脳皮質において認められた。そこでケトン体の直接作用を調べるために、アセト酢酸およびβヒドロキシ酪酸をマウスの脳室内に投与し睡眠記録を行った。その結果、アセト酢酸の脳室内投与はノンレム睡眠中の脳波デルタパワーの顕著な増大を引き起こしたのに対し、βヒドロキシ酪酸やVehicle投与では変化が認められなかった。さらに、ケトン体の脳室内投与時のグルタミン酸放出量をマイクロダイアリシス法により調べたところ、アセト酢酸の脳室内投与後のみグルタミン酸放出量の低下が認められた。以上のことから、ケトン体を介した中枢脂質代謝が睡眠制御と深く関わっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度は、ケトン体と睡眠との関連性を明らかにした点で、概ね順調に進展しているといえる。しかし、グリア細胞と高次脳機能の直接的関係については、明らかになっていないため、「おおむね」とした。
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今後の研究の推進方策 |
免疫組織学的手法等を用いて、アストロサイトで作られたケトン体と高次脳機能との関係について、計画書に従って進めていく。具体的には、AMPKやPPARsを始めとした代謝関連物質がどのように変化するかについて、GFAPなどとの多重染色を行うことで、慢性不眠および中枢代謝変化がアストロサイトの機能変化や形態変化に及ぼす影響を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物、試薬、英文校正など、計画書に従って使用する。備品は購入しない予定である。次年度への繰越額は、国際学会旅費および免疫組織染色のための抗体購入に使用予定である。
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