研究概要 |
知覚は入力された情報を逐次処理して知覚を構築するのみならず、前もって持っている情報や後から得られた情報を用いて豊かな知覚世界を実現させている。本研究では、後から得られた情報を用いて過去の情報を解釈し直す心の働きであるポストディクションに焦点をあて、ポストディクションの時空間特性について検討した。 まず、視覚方位処理のポストディクションについて検討した。ここでは、瞬間的に表示された方位情報の見え方が、その情報に引き続いて表示される方位に引き寄せられてみえる現象を報告した(Kawabe, 2012, PLoS ONE)。一方で、引き続いて表示される方位情報がマスキングによって知覚されない場合は方位のポストディクションが生じなくなる事を明らかにした。同様のマスキングを用いた場合においても同時方位対比は生じることから、方位情報は空間統合レベルまで処理されているものの、より高次な段階でまでは処理されておらず、その高次段階処理を必要とするポストディクションにはマスキングされた方位の効果が及ばなかったものと思われる。 次に、行為の因果性知覚に関するポストディクションについて検討した(Kawabe, 2013, Conscisouness and Cognition)。被験者はボタンを押し、画面上にドット運動を表示させた。その際、自分がどの位そのドット運動開始をコントロールしたような印象が得られたかを評定法により報告した。結果として、ドット運動の速度が高い時に評定値が高くなる結果が得られた。これらの結果から、行為後の行為結果の刺激の変化量から逆算して、自分の行為の因果性知覚を判断していることが示唆された。
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